シビックテックとは、市民がテクノロジーを活用して社会や地域が抱える課題の解決を目指す取り組みや技術の総称を指す。civic(市民)とtechnology(技術)の造語であり、海外では「civic technology(シビック・テクノロジー)」とも呼ばれる。

 例えば新型コロナウイルスが急速に広がっていた2020年3月に東京都が開設した「新型コロナウイルス感染症対策サイト」はシビックテック活用の代表例だ。

 同サイトの開発はITで地域社会の問題解決をめざす一般社団法人のコード・フォー・ジャパン(CfJ)が東京都から受託。CfJは受託後わずか1日半で公開し、市民が改良やバグの修正をできるようソースコード共有サービスのGitHubにソースコードを公開した。

 リリース後、300人超の市民エンジニアから5000件以上の意見が寄せられ、デザインの改良や多言語対応などにつながった。また、公開されたソースコードを他の自治体が活用し、東京都に続いて各県版の新型コロナ対策サイトが順次公開された。

 日本でシビックテックが本格的に動き始めたきっかけは2011年3月に発生した東日本大震災といわれる。震災発生時、技術者らが被災者や復興を支援するため、自主的にWebサイトなどを開発した。そのひとつが災害情報を収集・表示する「シンサイ・インフォ(sinsai.info)」だ。震災の4時間後には公開され、被害状況の共有や安否確認に使われた。同年、復興を継続的に支援するためのIT開発を支えるコミュニティー「Hack for Japan(ハック・フォー・ジャパン)」が生まれた。

 都市部以外にもコミュニティーが点在するのが日本の特徴だ。2013年に金沢市で立ち上がったCode for Kanazawaなど、各地で「Code for X(地域名)」が誕生。また、同年Hack for Japanのスタッフでもある関治之氏などが中核となり、CfJを設立した。CfJは各地域の団体同士をつなぐ役割も果たす。

オープンデータの整備も必須

 シビックテックの活動からは、地域の保育園・幼稚園の空き情報やゴミの分別方法が分かるサービスなどが生まれている。こうしたサービスの開発には、地域の課題をITで解決したい人と地域のデータを持つ公的機関との連携が不可欠だ。

 例えば、新型コロナ禍で脚光を浴びた台湾の「マスク配布システム」は、台湾政府で健康保険を担当する中央健康保険庁が、マスクを販売する薬局の30秒ごとの在庫データをCSV形式でネットに公開したことで、企業や市民技術者による開発が加速した。

 国や自治体もオープンデータの整備に向けて動き始めている。例えば神戸市では、イベント関連のデータをAPI(アプリケーション・プログラミング・インターフェース)連係で使えるようにしている。データを加工しやすい形で公開することで、企業や市民開発者のさらなる利用も見込める。

 ITの力で市民が主体的に地域課題の解決を目指すシビックテックは、現代の民主主義を体現するひとつの方法だ。