非接触決済の業界標準規格とそれに準拠した決済サービスを指す。クレジットカード会社の旧ユーロペイ(米マスターカードと経営統合)、マスターカード、米ビザの頭文字に由来してEMVコンタクトレスと称する。米アメリカン・エキスプレスや日本のJCB、中国銀聯(ユニオンペイ)も規格策定に参画し、世界標準規格の地位を確立した。約200カ国で使え、欧州諸国では店頭決済の主流になりつつある。日本では競合規格FeliCaの非接触決済が先行したが、普及が加速しつつある。

 EMVコンタクトレスでは対応したカードやスマートフォンを店頭端末にタッチすると、無線(NFC TypeA/B)で通信して決済する。クレジットカードの場合は他の代金と一緒に事後に請求され、プリペイドカードやデビットカードの場合は代金が即時に引き落とされる。店頭端末にカードを差し込んだり抜き取ったりする必要がある接触型のカードに比べ、スムーズに決済できる。

「Visaのタッチ決済」が国内で伸長

 日本国内では、ビザ・ワールドワイド・ジャパンやJCBなどがサービスを展開する。特に「Visaのタッチ決済」の展開が進んでおり、三井住友カードやイオンフィナンシャルサービス、楽天カードなどが対応のカードを2020年9月時点で3230万枚発行している。イオングループの店舗をはじめスーパー、コンビニエンスストア、飲食店などで使える。

 海外発行の対応カードも日本で使える。スマホは国内販売のiPhone(Apple Pay)は非対応だが、海外販売のiPhoneなら使える。Android端末(Google Pay)は海外だけではなく、国内でも対応端末が出回っている。

 日本では、JR東日本が2001年に電子マネーSuicaを始めて以来、Suicaが採用するFeliCa規格の非接触決済が広く普及してきた。スマホも「おさいふケータイ」としてFeliCa機能を内蔵しているものが多い。三井住友カードなどはiD、JCBなどはQUICPayのブランドで、EMVコンタクトレスではなくFeliCa準拠の非接触決済の普及を優先させてきた。

 FeliCaは海外ではほとんど使われていない。従来は訪日外国人が日本で買い物をする際、手持ちのカードやスマホの非接触決済を使えないという問題があった。そこで訪日外国人が急増し続けていた2017年ごろから、日本でもEMVコンタクトレスを推進する機運が高まった。機器ベンダーはFeliCaとEMVコンタクトレスの両方に対応する決済端末を開発し、日本マクドナルドやイオングループなど大手チェーンが導入を進めた。

 日本国内では、Suicaだけで約8422万枚(2020年9月時点)を発行しているFeliCa勢に比べ、EMVコンタクトレス対応カードやスマホの普及率が低く、使える加盟店もまだ少ない。ただし三井住友カードや楽天カードなどが新規入会や更新時にEMVコンタクトレス対応カードを発行しているため、普及率は今後急速に高まる見込みである。加えて、新型コロナウイルス禍が落ち着いた際には訪日外国人の利用を見込めることから、加盟店の拡大も進みそうだ。