国や地方自治体の行政機関などが情報システムを運用するために共同利用するクラウド基盤。民間のパブリッククラウドサービスを活用して、2021年9月に発足したデジタル庁が調達と構築を進める。まず中央省庁が運用する各種行政システムや市区町村の基幹業務システムで利用し、都道府県や独立行政法人にも利用を促す。行政や公的団体のIT基盤を統合し、運用の効率化と費用削減を目指す。

 2021年度中に運用を始め、まず8市町が参加して基幹業務に用いる先行事業の他、一部省庁のWebサイトで利用する。2022年度からは中央省庁の一部行政システムをガバメントクラウドに移行。2025年度末までに市区町村が住民票や地方税など標準的な17業務を担う基幹業務システムを移行させる。

 行政機関のITインフラへのガバメントクラウド活用は、政府の方針として決定している。2021年6月に政府が閣議決定した「デジタル社会の実現に向けた重点計画」では、「各府省庁は2022年度以降の新たなクラウドサービスの利用時、原則としてガバメントクラウドの活用を検討する」と明記。中央官庁に700以上ある行政システムの集約を図る。

 市区町村もガバメントクラウドを利用する努力義務が課せられた。2021年5月に国会で成立した「地方公共団体情報システムの標準化に関する法律」は、基幹の17業務分野を担う情報システムを政府が標準化する。そのうえで同法第10条では、標準に準拠したシステムの稼働環境として「クラウド・コンピューティング・サービス関連技術」を活用するよう努めるとしており、これが実質的にガバメントクラウドを指す。

 ガバメントクラウドが唯一の共同基盤となったことで、政府が過去に構築した共同利用型のITインフラは廃止する。2013年に運用が始まった政府共通プラットフォームを2023年度末に廃止するほか、2020年10月に運用が始まったばかりの第2期政府共通プラットフォームも2022年度からは原則として新規の利用を募集しない。

マルチクラウドで事業者の競争を促す

 政府がガバメントクラウドにIT基盤を統合する最大の狙いは高止まりしていた運用コストの削減である。クラウドへの移行と統合によって、基盤にかかる費用は3割程度減らせると見込む。民間のパブリッククラウドを採用することで、費用対効果が高くセキュリティーも確保された基盤が構築できるとしている。

 ガバメントクラウドは要件に合致した全てのITベンダーと政府が直接契約し、複数のクラウドサービスを使い分けたり組み合わせたりして使う「マルチクラウド」で構築する。事業者間の競争を促すとともに、特定ベンダーのサービスへ過度に依存するロックインを避けるためである。

 1回目となる2021年10月の調達では、応募3社から米アマゾン・ウェブ・サービスの「AWS」と米グーグルの「Google Cloud Platform(GCP)」の2つを選定した。政府は2022年度以降も調達先の事業者を募集する。