パソコンやスマートフォンなどのビデオ通話機能を利用し、医師が診察を実施すること。患者はあらかじめスマホなどで受診の予約と事前問診を済ませておく。予約の時間にアプリを起動しビデオ通話を介して医師の診察を受け、クレジットカードで診察料を支払う。2015年8月に解禁され、2018年4月から保険適用された。保険適用をきっかけに従来の「遠隔診療」に代わり「オンライン診療」という言葉が広く使われるようになった。

 オンライン診療は仕事や子育てに忙しく病院に通う時間の確保が難しい若い世代から、通院の負担が大きい高齢者まで、幅広い世代に利点がある。だが日本では保険診療として広く普及していないのが現状だ。オンライン診療に対する診療報酬の算定条件などが厳しく、医療機関が採用しにくいからだ。2018年7月の厚生労働省の調査ではオンライン診療を実施する医療機関は約1000カ所。全国の医療機関の1%にも満たない。

 オンライン診療が可能な対象疾患は生活習慣病や難病などに限られている。対象疾患であっても、事前に一定期間の対面診療をした後にオンライン診療を始めないと保険適用されないなどの条件が付いている。しかも医療機関が同じ疾患を診療する場合で比較すると、対面診療のほうがオンライン診療よりも診療報酬を多く得られる。

 2020年度の診療報酬改定では、4月からオンライン診療の対象に慢性頭痛と禁煙治療が追加され、対面診療の期間が6カ月から3カ月に短縮されるなど実施条件も緩和された。しかし医療関係者の間では「実施環境が大きく変化するものではない」との見方が多い。

 普及が進まない中でも、医療機関にオンライン診療向けのシステムを提供する企業の参入が相次いでいる。医療と縁遠かった企業も新たにシステムやサービスの提供を目指す。ケーブルテレビ事業者のジュピターテレコム(J:COM)は、テレビを活用したシステムを開発しており、2021年度の事業化を目指す。LINEやソフトバンクもオンライン診療を見据えたビジネスを検討している。いずれの企業にも共通するのが、「オンライン診療は必ず普及する」という見立てだ。「どこかでブレークするタイミングが必ず来る。規制緩和は時間の問題だ」(J:COM)とする。

新型コロナの感染拡大で利用機運

 実際、世界中で患者が急増した新型コロナウイルス感染症の影響で、オンライン診療の利用機運が高まっている。

 厚労省は2020年2月、定期的に来院する必要がある慢性疾患などの患者を対象に、医師がオンライン診療で常用薬の処方箋を出すことと、薬剤師がオンライン服薬指導を実施することを一時的に認めるとした。新型コロナウイルスに感染すると重症化するリスクの高い患者が、自宅にいながら常用薬を手に入れられるようになった。さらに3月には、今後感染が拡大し入院患者が増大した場合、無症状や軽症の新型コロナウイルス感染症の患者に対するオンライン診療を特例的に認めるとの方針を打ち出した。