自動運転車向けに整備が進められている高精度の地図情報システムで、ドライバーを必要としない自動運転の実現に不可欠な技術。カーナビの地図はメートル単位の精度で上下線単位の道路情報しか持っていないのに対して、高精度3次元地図はセンチメートル単位の精度を持ち、車線単位で道路情報を管理する。このため車線単位での経路作成や、渋滞・道路工事の把握などが可能になる。

 カーナビの地図が位置情報の表示を目的にしているのに対し、高精度地図は自動運転システムの制御を目的とする。カメラやレーダーなどの車載センサーと組み合わせて使うことで、自動運転システムが詳細な道路情報や周辺物の絶対位置を認識し、ステアリング操作やブレーキなどを制御する仕組みだ。

 高精度地図の整備にかかるコストは大きく、日本の主要道路を地図情報にするのに1000億円以上、毎年の地図更新に数十億円かかるといわれている。1台が数千万円もする測量車両を全国にくまなく走らせて測量をしなければならないからだ。このため日本では三菱電機と地図関連5社、国内自動車メーカー10社などが出資するダイナミックマップ基盤(DMP)が主体となって「オールジャパン体制」で地図の整備を進めている。

 DMPは2016年から地図の整備を始め、2019年3月末までに全国の高速道路と自動車専用道を合わせた約3万キロメートル分を整備した。現在はこれらのデータを、同社に出資する地図会社を通じて国内外の自動車メーカーに有償で提供している。さらに一般道の地図整備に向けた準備も進めている。

 DMPが提供するのは車線や標識、構造物の形状などの静的情報からなる3次元の地図データだ。この地図を基盤に地図会社が独自に収集した車線や信号、標識にひも付く情報、構造物の名称、店舗情報などを付加する。さらに自動車メーカーが交通規制や道路工事、渋滞、天候といった動的情報を加え、自社の自動運転車に配信する仕組みだ。動的情報の更新には、走行中の自動運転車の車載センサーで得たデータを収集して活用する。

進むグローバルでの合従連衡

 高精度地図の整備を巡りグローバルでの合従連衡が加速している。単独で開発するのは米グーグルぐらいだ。DMPは2019年に米ゼネラル・モーターズ(GM)系で北米での高精度地図の整備を手掛ける米アッシャーを買収した。地図の仕様や更新方法を共通化して日米での整備・普及を加速させる狙いだ。

 高精度地図の整備を手掛けるオランダのヒア・テクノロジーズは、2017年にパイオニアや富士通、三菱電機と提携した。2018年にはパイオニアの地図子会社でDMPに出資するインクリメントPや、中国の地図会社である四維図新、韓国の通信事業大手SKテレコムと地図規格の共通化を目指すアライアンスを立ち上げた。オランダ地図大手のトムトムも2018年に中国大手ITの百度、2019年にデンソー、2020年には日立オートモティブシステムズの米子会社と提携するなど仲間づくりを進めている。