中央銀行が発行し、決済に使えるデジタル通貨のこと。その国の法定通貨建てで、中央銀行の債務として電子データ方式で発行する。CBDCと略される。

 日本円や米ドルなど各国で使われる法定通貨と1対1で連動している。暗号資産(仮想通貨)のように価値が大きく変動せず、相対的に安定している。

 スマートフォン決済の「PayPay」や交通系ICカードの「Suica」といった民間企業が発行する電子マネーは、運営会社の限られた経済圏でしか使用できない。販売者は銀行口座を介して顧客が支払ったカネを受け取るため、決済から受け取りまでに時間がかかる。

 一方、CBDCは紙幣や硬貨と同様、どこの店でも使えて誰に対しても送金できる。決済から受け取りまでのタイムラグもない。

 CBDCには2つのタイプがある。1つ目は個人や企業などの幅広い主体による利用が想定される「一般利用型CBDC」である。2つ目は金融機関間の資金移動を目的とする「ホールセール型CBDC」だ。銀行間決済には中央銀行に対する金融機関の当座預金を使うことが多いが、ホールセール型CBDCもこれに近い用途を想定している。ブロックチェーン(分散型台帳)技術などの応用に期待がかかる。

新興国や中国が先行

 2019年、米フェイスブックが決済に使える国際的なデジタル通貨「Libra(現在はDiemに改称)」の構想を掲げてから、CBDCを取り巻く各国の動きが加速した。

 新興国が先行する。2020年10月、バハマとカンボジアの中央銀行がCBDCを発行した。新興国はATMなどの金融インフラが整っていない一方、スマホの普及率は高い。そのためスマホを使った民間の送金サービスの利用者も多い。しかし民間送金事業者の経営が不安定になるリスクも抱える。新興国のCBDC発行には、誰もが金融サービスを利用可能にする「金融包摂」を進める狙いもある。

 カンボジアの「バコン」はリテール取引の決済手段として使われている。スマホアプリを介して支払いや送金ができる。カンボジア国立銀行とブロックチェーン開発のソラミツ(東京・渋谷)が共同で開発した。

 中国も積極的に取り組んできた。中央銀行の中国人民銀行は2014年に研究チームを発足した。2020年には深圳市など複数の都市で実証実験を実施した。2022年に開催予定の北京冬季五輪までに「デジタル人民元」を正式発行することを目指す。

 日本銀行は2021年4月、第1段階の実証実験を始めた。日立製作所と組み、コンピューター上の実験環境で発行や流通などの基本機能を検証する。ただし日銀は「現時点で発行計画はない」との姿勢を示している。

 国際決済銀行(BIS)の調査によると、2020年時点では65カ国・地域の中央銀行のうち約6割が実証実験の段階と回答した。プライバシー確保やサイバーセキュリティー、災害時などオフラインでも利用できる体制の確立などCBDCの課題は山積している。