2023年10月に導入する消費税の「適格請求書等保存方式」(インボイス制度)において、企業が消費税を納税する際に必要となる「適格請求書(インボイス)」を電子化する仕組みのこと。民間主導で標準規格を作る動きが広がっている。

 インボイスは適用税率や税額の明細を記載した請求書や納品書などを指し、「適格請求書発行事業者」として登録した売り手の事業者が発行する。買い手の事業者が納税する際に、商品販売で受け取った消費税額から、仕入れ時に支払った消費税額を差し引くために必要だ。

 例えば企業が1000円の商品を仕入れる場合、消費税率10%に相当する100円を加算して仕入れ先企業に代金を支払う。この商品を3300円で販売する場合、顧客から消費税330円を加算した合計の代金3630円を受け取る。企業はこの330円から仕入れ時に支払った消費税100円を差し引いた230円を税務署に納める。これを仕入税額控除という。

 現行制度では企業は帳簿上のデータを基に仕入税額控除を申告できる。ただし消費税率の10%への引き上げに伴い食料品などの軽減税率8%が導入されたため、企業は複数税率で納税額を計算する必要が生じている。

 インボイス制度が導入されると、請求書などインボイスを基にした申告が必要になる。仕入れ先から受け取ったインボイスを保管しておき、納税の際に各インボイスに記載された消費税額を積み上げ計算して仕入税額控除を受ける形になる。企業が恣意的に納税額を操作する不正行為や記載ミスを防ぐためだ。

 インボイス制度は免税事業者との取引などを除く全取引が対象で、7年間の保管義務があり、紙のインボイスだと保管の手間とコストが膨らむ。買掛金の帳簿データとインボイスを突合する際も手作業を強いられる。

 このためインボイス制度の導入に合わせて請求書などを電子化する試みが始まっている。流通や建設、製造業などの一部の大企業は、既存の業界EDI(電子データ交換)を使って独自に電子インボイスに対応する見込みだ。国はインボイスの電子化についての判断を企業に任せ、直接関与しない方針という。

インボイスの電子化で標準化の動き

 ただこれでは、EDIに加わらない企業との取引では利用できない。そこでITコーディネータ協会(ITCA)は各業界の電子インボイスを相互変換できる仕様を検討している。電子インボイスに必要なデータ項目はどの企業でも同じだ。ITCAは業界EDIの納品書や注文書に自動突合用キーを組み込んだり、業界別のデータ項目を相互変換できる「共通辞書」を作ったりして、業界の垣根を越えて仕入税額控除の自動計算を可能にするデータ変換サービスの仕様を策定する方針だ。

 ITCAと連携してSAPジャパンなどのITベンダーも2020年7月に、電子インボイスの標準化や仕組みを構築する「電子インボイス推進協議会」を発足させる。年内をめどに標準規格を作り、2021年にはシステム開発に着手できるようにする。