ジョブディスクリプション(JD:職務記述書)などで明文化した職務内容に基づき、職務を遂行する能力を持った人材を雇用する形態。職務内容のほか責任範囲、難易度、必要となるスキルや資格などを明確にした上で、職務の専門性や難易度などに応じて処遇する。欧米などでは一般的な雇用形態だ。

 これまで日本で主流だったのはメンバーシップ型という雇用形態だ。職務ではなく「人」を中心に考え、社員にどのような仕事をさせるか、どのようなキャリアを積ませるかという観点で社員を配置し処遇する。

 メンバーシップ型雇用は通常、終身雇用制度とセットで運用される。終身雇用制度の下で社員は複数の部署を異動しながら、特定分野のプロフェッショナルではなくゼネラリストとしてキャリアを歩むことになる。長期雇用を保証することで企業への忠誠心を高め、様々な業務を経験させて将来の幹部人材を育成することを目指してきた。

 しかし昨今、ビジネスのデジタル化の進展などにより企業は変革を迫られており、IT人材など高度な専門性を持つ人材を育成・獲得する必要性が生じている。しかし、メンバーシップ型と終身雇用を兼ねる日本型雇用では、優秀な外部人材を採用しようとしても、同年代の社員の給与水準を超える処遇を与えることは難しい。そこで日本企業の間でも、ジョブ型雇用への関心が高まっていた。

 新型コロナウイルス禍により、人事評価の観点からも改めてジョブ型雇用が注目されるようになった。リモートワークでは勤務態度などの定性的な評価が難しい。仕事の結果や成果物で評価する必要があるが、職務が明確になっていないメンバーシップ型雇用では、何を成果とするかが曖昧になる。ジョブ型雇用ではJDに目標を明記することで、成果を客観的に評価しやすくなる。

 実際にジョブ型雇用への移行を目指す企業も出てきた。IT業界では日立製作所がジョブ型への転換を進めており、2021年3月までに全職種におけるJDを作成する予定だ。富士通は2020年4月から幹部社員を対象にジョブ型人事制度を導入した。KDDIもジョブ型雇用転換への一環として、2021年4月の新卒社員から能力に応じた給与体系を導入する。

エンジニアの転職に好影響も

 ジョブ型への移行はITエンジニアのキャリアにも影響を与える。リクルートキャリアでキャリアコンサルタントを務める松田美由紀氏は「今までは会社にアサインされたプロジェクトで、与えられた仕事をこなせばキャリアが開けた。今後は本人が先を見据えてキャリア形成をしなければ、望む待遇で働けなくなる可能性がある」と警鐘を鳴らす。

 一方で、転職を考えるエンジニアにとっては「求人の職務が明確になることで、自身に適正のある仕事かどうかを判断しやすくなる」(松田氏)という。これまでもエンジニアは専門ごとに採用されていたが、仕事の難易度などもJDにより明確に示されることで、採用企業のニーズとのミスマッチの減少が期待できる。