菅義偉内閣が行政のDX(デジタル変革)を推進するために設置を目指す新しい行政機関。菅氏は首相就任前の自民党総裁選で、デジタル庁設置を自身の目玉政策として掲げた。2020年9月16日の首相就任後の記者会見では、「複数の省庁に分かれる関連政策を取りまとめて強力に進める体制として、デジタル庁を新設する」と明言した。

 行政のDXを推進する担当大臣として「デジタル改革相」のポストを新設し、IT政策に詳しい平井卓也衆議院議員を充てた。「デジタル改革関係閣僚会議」も新設し、菅首相はこの場でデジタル庁創設に向けた基本方針をまとめるよう指示した。2021年1月招集の通常国会で関連法案を提出する意向だ。併せて、2001年に施行されたIT基本法(高度情報通信ネットワーク社会形成基本法)の抜本的改正も目指すとしている。

 実務を主導する平井デジタル改革相は2020年9月30日に、デジタル庁設置に向けた「デジタル改革関連法案準備室」を内閣官房内に置き、自ら室長に就任した。約50人のスタッフは経済産業省や総務省などから集めた。

デジタル庁長官には民間人を起用へ

 デジタル庁の姿は2020年10月中旬時点ではまだ明確ではないが、平井大臣はデジタル庁長官には民間人を充てる方針を示している。今後は、デジタル庁がシステムの構築や標準化に向けてデジタル・IT予算と人事権をどの程度掌握できるかなどが焦点になる。

 実はデジタル庁構想より前から、行政のDXに関する動きはあった。その動向からデジタル庁の在り方をある程度類推できる。2019年5月には、国の行政手続きを原則電子化すると定めた「デジタルファースト法」が成立している。同法に基づき、同年12月に「デジタル・ガバメント実行計画」を閣議決定し、2024年度中に国の行政手続きの9割を電子化するための工程表を示した。

 政府全体のIT調達予算は年間7000億円程度あるとされる。各省庁が縦割りで予算を編成して調達するため、コストが高止まりになりがちで、構築されるシステムも省庁ごとに部分最適になりがちだ。このため、新型コロナウイルス感染症対策を打つ過程で、各省庁や地方自治体との間でシステム連携がスムーズにできず、給付金の支給に遅れが生じるなどの問題が顕在化した。

 デジタルファースト法の付則ではIT調達予算を内閣官房に一元化することを検討事項としている。さらにデジタル・ガバメント実行計画では、内閣情報通信政策監(政府CIO)が全省庁のプロジェクトを一元的に管理すると規定している。予算権限をデジタル庁が握れば、システムの標準化などを通じて全体最適やコスト削減を実現できる可能性が広がる。必要な人材を各省庁や民間から登用できる人事権を持つことで、DXプロジェクトを強力に推進するための体制も構築しやすい。

 しかし、予算や人事の権限移管には各省庁からの激しい抵抗が予想される。政治主導をどこまで貫けるかで、デジタル庁の姿は大きく変わりそうだ。