本連載では、アイ・ティ・アール(ITR)が毎年実施している「IT投資動向調査」の調査結果を担当アナリストが読み解き、国内企業のIT投資の現状や重視するIT戦略、2020年度に特に投資意欲の高い製品・サービス分野を解説している。
第2回となる今回は、2019年8~9月に実施した「IT投資動向調査2020」で、来期(2020年度)のIT戦略上の課題テーマとして、企業が「重要」と「最重要」の課題として捉えているもの、そして近年注目しているIT施策の重要度と実施率の変化について述べる。さらに調査終了後の2020年に顕在化した、新型コロナウイルス感染拡大の影響についても言及する。

無視できなくなった「サイバー攻撃への対策」
最初に、企業が来期に最重要視するIT戦略上の課題テーマでは、上位5項目(1位から「売上増大への直接的な貢献」「業務コストの削減」「顧客サービスの質的な向上」「システムの性能や信頼性の向上」「ITコストの削減」)に、前年度と順位の変動はなかった(図)。
「売上増大への直接的な貢献」は11年連続で首位を維持しており、これに「業務コストの削減」「顧客サービスの質的な向上」が続いている。この上位3項目は、2014年度から不動の並びとなっている。
前年の調査結果(図1左側の「2019年度の順位」)から大きく順位を上げたのが、「サイバー攻撃への対策強化」(11位から8位へ)と「経営における意思決定の迅速化」(18位から14位へ)だった。
「サイバー攻撃への対策強化」は、外部からの攻撃が依然として収まらないという理由からか、前年よりも3つ順位を上げた。ここ数年は注目が高かった「従業員の働き方改革」や「デジタル技術によるイノベーションの創出」「プライバシーや機密情報の保護」といった項目を抜いている。