企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を支援できる人材確保に向けNECは2021年4月入社の新卒から、役割に応じた報酬水準で処遇する仕組みを導入する。具体的には、「データサイエンス」「サイバーセキュリティ」「DXビジネス」などの分野のキャリア採用に応募できるようにする。

 学生が持つスキルと入社後に担う役割を照らし合わせ、成立する場合はキャリア採用枠で採用して給与を設定する。同社は2019年、新卒を含む若手の研究者を対象に、市場価値を考慮した報酬上限のない「選択制研究職プロフェッショナル制度」を導入した。新卒がキャリア採用に応募できる仕組みの導入は、こうした人材確保策の一環だという。

 以前から同社は「セキュリティー」や「AI」などの分野別に人材の採用や育成を実施してきた。その取り組みで他の分野に先行するのが、セキュリティー分野である。「サイバーセキュリティ戦略本部」という部署が、グループ企業も含めたセキュリティー人材の募集から配属、育成、配置転換の役割を担当する。同本部がハブ役となり各事業部門の人材ニーズを把握して採用や育成などを一手に担うことで、必要なスキルレベルの人材を必要なときに、必要な部門に適切に配置できるようにするためだ。

 新卒採用においては同本部での一括採用の方が優秀な学生を募りやすく、学生にとってもグループ企業から部門を選べるメリットがあるので採用につながりやすいという。また研修など育成の機能を同本部に集約すれば大規模な人数を効率的に育成しやすい。各部門で外部研修を利用するよりもコストを抑えられるというメリットもある。

 同本部による採用や育成の具体的な流れは、次のようになる。人材の採用企画や募集を同本部が行い、各SI事業部門やグループ企業が選考して、それぞれの部署に配属する。配属後の人材は、同本部が運営する研修によりスキルや知識を高める。さらに、エンジニアのキャリア形成に沿って適宜、別の部署に配置転換する。

 また同本部は約150人のセキュリティー技術者を擁し、事業部門の営業支援や技術支援を手掛ける。脅威情報の収集やセキュリティーガイドラインの作成、事業部門へのセキュア開発手法の展開、顧客企業に納入するシステムの安全性検査なども同本部の重要な役割だ。

 高度IT人材の育成を巡りNECは全社の認定資格制度である「NECプロフェッショナル認定制度(NCP)」を運用してきが、2019年度から新規の募集を停止している。「NCPでは資格取得が昇進と連動していたが、社員にとって資格取得が目的になってしまう面があった」(同本部の淵上真一サイバーセキュリティ技術センターセンター長)からだ。

 企業の課題やニーズが多様化する中、セキュリティーやAIなどの先端技術領域では、すべての分野で統一されたスキル体系では不十分な面もある。そこで現在、市場のニーズに合ったスキルを持つ人材をタイムリーに育成することに重きを置いた新しいスキル体系を開発している。セキュリティー分野でも、事業に求められる職務やスキルを明確にし、必要となるトレーニングメニューを整える計画だ。「資格取得を目的とするのではなく、仕事の評価によって昇格できるようにしていく」(淵上センター長)。

 優秀なセキュリティー人材を獲得するための取り組みの1つが、新卒採用における各大学との連携である。大学の研究室と同本部の共同で研究をしたり、ゼミの授業を受け持ったりすることで、「研究室の困りごとに柔軟に応え、接点を絶やさないようにしている」(淵上センター長)。

 一方キャリア採用では「使命感を共有できること」(同センター長)を重視し、技術者としての意欲を満たすことに注力する。まず各部門でどのような人材が不足しているかの把握から始める。そのうえで、セキュリティーに関する知識やスキル、経験を有する人材と接点を作り、本人のニーズと事業部門のニーズをマッチングする。必要な機材を潤沢にそろえることも、技術者のやりがいを高める重要な要素だという。

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