2020年のPC市場は、新型コロナウイルスの感染拡大と文部科学省が推進した「GIGAスクール構想」の影響を受け、当初の予想とは大きく異なる動きを見せた。本稿では、2020年の国内トラディショナルPC出荷台数とメーカー別シェアを整理し、2021年以降の市場動向を推測する。

IDC Japanは2021年2月26日、日本国内のトラディショナルPC(デスクトップPC、ノートPC、ワークステーション。ただしタブレットは含まない)の市場出荷実績値を発表した。2020年通年の出荷台数は1734万台(前年比0.1%減)となり、2020年第4四半期(10月~12月)では474万台(前年同期比4.7%増)となった(図1)。
2020年のPC出荷台数は当初、大幅な下落が予想されていた。2019年に、2020年1月のWindows 7の延長サポート終了(Windows 7 EOS)と、2019年10月からの消費税増税をにらんだPCの買い替え需要があったからだ。2019年のPC出荷台数は過去最高の1736万台となっており、2020年はその反動を受けるはずだった。
2020年のPC出荷台数が、前年とほぼ同じ1734万台となった要因は大きく2つある。新型コロナウイルスの拡大に伴う、家庭でのPC需要の増大と、小中学校で児童生徒1人に1台、PCなどの学習用端末を配備する「GIGAスクール構想」である。
GIGAスクール構想で文部科学省は、1台当たり4万5000円を上限に端末の整備を補助する。このため、上限額に近い価格帯のコンバーティブルタイプ(ディスプレー部とキーボードが分離しない)ノートブックや、デタッチャブルタブレット(キーボードを取り外しできるタブレット)の需要が伸びた。
法人需要よりも家庭需要が大きくプラスに
IDCはトラディショナルPCの市場を、法人が購入する「コマーシャル(法人需要)」と個人で購入する「コンシューマー(家庭需要)」に分けて集計している。それぞれを前年と比較すると、法人需要はマイナス6.0ポイントで家庭需要はプラス15.3ポイント となった。
2020年は、一時的な品不足から、中小企業などで業務に使うPCを一括購入できない事象が多数発生した。こうした企業は手当を支払うことで、従業員のPC購入を支援する手法をとったため、家庭需要として計上された。