クライアント仮想化市場は、新型コロナウイルスの感染拡大に伴うテレワーク/在宅勤務の増加とユースケースの拡大という2つの要因により、2020年から21年にかけて大きく伸長した。本稿では、この2つの要因を分析し、21年以降の市場動向を推測する。

クライアント仮想化導入率の伸長は、IT管理者を対象にしたIDC Japanの調査で明らかになった。2021年1月から2月にかけて実施した調査からはじき出した2021年の導入率(「全社導入」「部分導入」「試験導入」の合計)は40.4%となり、2020年の調査時点の27.7%と比較して12.7ポイント増となった(図1)。
導入率を増加させたコロナ禍への対応
クライアント仮想化とは、クライアント端末のOSやアプリケーション、データ領域をサーバー側に集約する技術で、デスクトップ仮想化(VDI:Virtual Desktop Infrastructure)やサーバーデスクトップ共有(SBC:Server Based Computing)などの方式で実現する。
サーバー側にリソースをまとめることで、OSのアップデートや端末の利用状況の管理などが容易になり、運用コストを削減できる。クライアント端末にデータが残らないため、セキュリティをより強固にできる。
IDCはクライアント仮想化を広義に定義しており、VDI方式やSBC方式の他にアプリケーション仮想化やHDI(Hosted Desktop Infrastructure)、イメージストリーミング、さらに自席PCへアクセスするリモートデスクトップ、USBキーを使用するソリューションなども含めている。
IDCは上記の導入率を踏まえ、クライアント仮想化を導入済みの企業(550人)と導入候補の企業(導入予定および導入検討中、550人)のIT管理者やエンドユーザーなど計1100人を対象とした調査を実施した。ここから、クライアント仮想化の導入が大きく伸びた理由が、「コロナ禍に伴うリモートワークの増大」と「各業界でのユースケースの拡大」であることが見えてきた。
まず、「リモートワークの増大」に伴いクライアント仮想化の導入を増やした企業群は、大きく3つに分類できる。
1つめは、クライアント仮想化を新規に導入した企業群である。その多くは2020年4月の緊急事態宣言を受けて、急きょ在宅勤務やリモートワークを実現する必要にかられ、環境を整備していった。