IDC Japanは2021年7月、国内CRM(Customer Relationship Management)アプリケーション市場(売上額ベース)規模について、2020年が1871億7300万円となり、2025年は2448億8200万円になるという予測を公開した(図1)。2020年~2025年の年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)は、5.5%で推移する。
IDCは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の影響が具体的に見えていなかった2020年5月時点で、2020年の同市場が1786億4100万円になると予測していた。しかし1年を経て、前年の値を大きく上回ったことが見えてきた。
COVID-19の感染拡大は、社会に「デジタルシフト」と「コンタクトレス」という変化をもたらした。外出時間の短縮やステイホームなど社会的な要請を受け、従業員が在宅勤務に移行したことで、顧客との接点はデジタルチャネルに急速にシフト。多くの組織と人が、「非接触」「非集合」といったコンタクトレスを求めるようになったのだ。
COVID-19の影響で景気は悪化したが、この2つの変化に多くの企業が対応したことで、CRMアプリケーション市場に追い風が吹いたといえる。
マーケティングとセールスの市場が伸びた2020年
IDCは国内CRMアプリケーション市場を、(1)広告アプリケーション市場、(2)コンタクトセンターアプリケーション市場、(3)カスタマーサービスアプリケーション市場、(4)デジタルコマースアプリケーション市場、(5)マーケティングキャンペーン管理アプリケーション(以下、マーケティングアプリケーション)市場、(6)セールス生産性/管理アプリケーション(以下、セールスアプリケーション)市場という6つの機能市場に分類している。
2020年の国内CRMアプリケーション市場を、機能市場ごとに推定した売上額と前年比成長率を表に示す。
機能市場 | 売上額 | 前年比成長率 |
---|---|---|
(1)広告アプリケーション市場 | 397億7100万円 | 0.3% |
(2)コンタクトセンターアプリケーション市場 | 326億 600万円 | 4.8% |
(3)カスタマーサービスアプリケーション市場 | 397億8000万円 | 7.3% |
(4)デジタルコマースアプリケーション市場 | 145億1900万円 | 9.9% |
(5)マーケティングキャンペーン管理アプリケーション市場 | 314億4700万円 | 11.3% |
(6)セールス生産性/管理アプリケーション市場 | 290億4900万円 | 10.9% |
国内CRMアプリケーション市場全体 | 1871億7300万円 | 6.7% |
機能市場別に今後を予測してみよう。
2019年時点で最も売上額が大きかった広告アプリケーション市場は、2020年5月に予測していた成長率を下回り、2020年の前年比成長率が0.3%にとどまった。広告市場でデジタルの比率は相対的に増したものの、景気悪化で広告市場全体が縮んだことが影響した。2025年までの年間平均成長率は4.0%であると予測したが、この値は6つの機能市場の中で最も低い。