2000年代前半にERP(統合基幹系業務システム)パッケージをアドオン(追加開発)ソフトを多用して導入したが、バージョンアップもままならず基幹系が塩漬けになっている。途中でオープン化したものの数十年前にメインフレームで導入した自社開発の基幹系システムを継続して利用しているが、保守を重ねて新機能の追加が難しくなっている――。

 経済産業省が「DXレポート ~『ITシステム2025年の崖』克服とDXの本格的な展開~」で提言したように、10年以上前に構築した古い基幹系システムは企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を妨げる要因の1つになっている。DXレポートは古い基幹系システムの問題点を「ブラックボックス化していてデータの活用を妨げている。その結果、市場の変化に対応して、ビジネスモデルを柔軟・迅速に変更できない」と指摘する。

 2018年9月に登場したDXレポートでは「2025年までに基幹系システムの刷新を集中してしなければ、DXを実現できずに崖に落ちる」と警告している。新型コロナウイルス禍で企業の事業環境が大きく変わる中、DXへの取り組みは当時よりも急務になっているのは間違いない。今から基幹系システムを刷新する場合、従来の基幹系システムとは異なる発想が求められる。

SoRとSoEは区別しない

 新しい基幹系システムを企画する際に踏まえるべきポイントは大きく2つある。1つは基幹系システムとDXを実現するための境目をなくすこと、もう1つは基幹系システムの範囲を考え直すことだ。

 基幹系システムは一般的にヒト・モノ・カネという経営資源を管理し、その発生を記録していくシステムを指す。企業によってその範囲は異なるが、会計や販売管理、生産管理などのシステムを指すことが多い。ヒト・モノ・カネのデータを記録することから「SoR(システム・オブ・レコード)」と呼ばれることもある。

 一方、DXを実現するシステムはSoRに対して「SoE(システム・オブ・エンゲージメント)」と呼ばれることが多い。発生した取引を記録するのではなく、新しいビジネスや取り組みそのものを支援することから従来の基幹系システムと区別される。

 DXを支援するための基幹系システムを企画する際のポイントの1つめが、SoRと呼ばれている基幹系システムとSoEと呼ばれているDXを支援するためのシステムを区別なく構築することである。富士通の中村記章エンタープライズMobilityシステム事業本部プリンシパルアーキテクトは、「企業システムは変革の手段の1つ。DXというと多くの企業がSoE単体で取り組んでいるが、多くのデータを管理するSoRと連携しないと大きな効果は得られない」と指摘する。

 その一例が生産管理システムだ。生産管理システムの構築を得意とするビジネスエンジニアリングの志村健二ソリューション事業本部SCMソリューション第1本部長は、MRP(資材所要量計画)から指図書を作成し、生産工程を管理する従来から存在する生産管理システムは「生産に関する原価などの財務データを算出する目的で構築されている。製造業のDXを進めたからといっても、その役割は変わらない」と話す。

 一方で製造業は今、IoT(インターネット・オブ・シングズ)を活用したデジタル化が進んでいる。IoTを利用した工場は生産設備などの稼働状況や、稼働状況を基にした生産実績がリアルタイムで分かる。「ただし実績が分かるだけでは、工場内の部分最適にとどまってしまう」と志村本部長は指摘する。

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