数十年前に構築したレガシーシステムはデジタルトランスフォーメーション(DX)を阻害する。基幹系システムを刷新しなければ――。経済産業省は2018年に発表した「DXレポート」で古い基幹系システムはDXの阻害要因になると指摘。2025年までに刷新しなければ崖に落ちると提言した。

 だからといって基幹系システムの全面刷新に着手するのは早計だ。「現行の基幹系システムが支援しているコアの業務はこの先も変わらずに必要になる」(アビームコンサルティングの大村泰久P&T Digitalビジネスユニット執行役員プリンシパル)からだ。

 会計システムを使って財務諸表を作成する、生産管理システムで生産計画を立案するといったような基本的な機能は、DXを推進する場合にも必要な業務であることは変わらない。こうした業務を支援するアプリケーションを再構築する必要は基本的にない。再構築したほうがいいのは、人手の作業が減り、自動化が進むといったメリットが明確なケースだ。

 日本IBMの二上哲也執行役員IBMオープン・クラウド・センター長も「メインフレームを利用していたとしても、必ずしもメインフレーム上で稼働するすべての機能をオープン化する必要ない」と話す。「DXは企業競争を支援する考え方。基幹系システムの中でもまず、競争領域を優先すべきだ」(二上執行役員)という。

 金融機関の勘定系システムの場合、メインフレームで動作していることが多い。勘定系システムを構成する口座管理といった機能は、企業の競争力強化にはつながりにくい。それならば口座管理の機能は残し、周辺のモバイルバンキング機能の充実などに注力することがDXの推進には有効といえる。

 そこでDXに向けて基幹系システムを刷新する際にカギとなるのは、刷新すべき機能と残す機能を見極めることだ。そのうえでDXを支援する機能は新たに開発し、残すと決めた機能はDXの取り組みを阻害しないように追加開発や保守していく必要がある。

DXでも変わらない機能を探す

 まずは新たに開発すべき機能と残すべき機能を見極めることから始めていく。富士通の中村記章エンタープライズMobilityシステム事業本部プリンシパルアーキテクトは、「DXを推進する際に変わることと、変わらないことを念頭に見極めることがポイントになる」と話す。

 営業担当者が顧客先を訪れて製品を販売することが前提となっている販売管理システムを考えてみよう。受注データを基に、製品の出荷指示や請求管理などの業務を支援するシステムだ。営業担当者が受注データを入力することが前提になっている。

 この企業がDXの一環として消費者への直接販売をWeb経由で開始する。そこで「新たな販売方法を開始するからといって販売管理システムの全面刷新は必要ない」とアビームコンサルティングの大村プリンシパルは指摘する。受注データを受けて出荷や請求をする業務は、営業担当者が販売する場合も、消費者にWeb経由で直接販売する場合も変わらない。

 そこで大村プリンシパルは「営業が中心だった企業の場合、Web経由の販売を開始してもしばらくは営業経由からの売り上げが多くを占める。新しい販売方法を始めるからといって、既存の営業前提のシステムのほうを大きく変える必要はない」と説明する。Web経由の販売であっても、既存の販売管理システムが持つ受注データを受けて出荷指示を出す機能は必要になる。

基幹系システムを刷新する際の考え方
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