基幹系システムを構築する際の手段の1つがパッケージソフトを利用することだ。世界中で多くの企業が利用するERP(統合基幹業務システム)のベンダーは今、デジタルトランスフォーメーション(DX)を前提にした基幹系システムの姿をどのように描いているのだろうか。

 主要なERPである欧州SAPや米オラクル(Oracle)は今、ERPが支える業務のDXや、企業のDXそのものを製品の強化を通じて支援しようとしている。特に注力するのがAI(人工知能)の活用、クラウドでの提供、そしてこれまでERPが自動化できていなかった領域への拡大だ。その詳細を以下で見ていこう。

ベテランの頭の中をAIでERPに実装

 業務のDXに向けERPが積極的に取り込んでいるのがAIだ。SAPジャパンの上硲優子ソリューション統括本部デジタルアプリケーション&プラットフォーム本部財務経理ソリューション部マネージャーは、「当社の製品ではDXの観点で見た場合、ERPのAI活用には大きく3つのパターンがある」と話す。

 1つはERPを導入しても手作業で残っていた領域の自動化だ。これまで手作業が前提だった請求書データと入金データのマッチングをAIで自動化するクラウドサービス「Cash Application」をSAPは提供している。ERPに蓄積したデータを利用して、マッチング候補を提案するサービスだ。日本企業では現在、PoC(概念検証)を実施して導入を検討している企業がある状況だ。

SAPの「Cash Application」の画面例。機械学習によって消し込み処を実行している。赤い枠内が実行処理内容のログで、処理後に確認することが可能
(画像提供:SAPジャパン)
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 2つめは人間が実施していた高度な手作業をAIで代替することで、誰でも業務の遂行を可能にする機能だ。「購買担当者が発注先のこれまでの納入実績を踏まえて納入日を予測する」といった分析をAIが代替する。これまではベテラン社員がそれぞれの経験から抱え込んでいた「この取引先はいつも遅れそうだ」といった情報を、ERPの発注時の画面に提示する、といった機能を提供する。

 最後の3つめのパターンは、これまで実行できなかったことがAIによって実行できるようになるケースだ。その一例に財務リスクの分析ソフト「SAP Business Integrity Screening」がある。Business Integrity ScreeningはERPのトランザクションデータをリアルタイムで分析し、不正と思われる取引を検知する。上硲マネージャーは「これまで会計データを使った不正検知は、すべてのデータを利用するのではなく、サンプルを取得して実施するのが当たり前だった。これがAIを利用することで全件検査できるようになった」と説明する。

クラウドで進化を促す

 もう1つDXに向けた進化の領域としてERPベンダーが注力しているのが、クラウドサービスとしてのERPだ。特にクラウドERPを推奨しているのがオラクルだ。オラクルはオンプレミス環境向けの「Oracle E-Business Suite(EBS)」の後継製品となるERP「Oracle ERP Cloud」はクラウド版しか用意していない。

 「DXを支援するためのアプリケーションはSaaSであることが必須」(日本オラクルの中島透クラウドアプリケーション事業統括事業開発本部ディレクター)との考えからだ。「ERPとしてはDXを支援するための機能を年に数回の頻度で提供している。これまでのオンプレミスモデルのように、5年に一度のバージョンアップでは間に合わない」(中島ディレクター)とする。

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