本特集では、DX(Digital Transformation)を目指す企業の情報システムに必要なITアーキテクチャー(デジタルアーキテクチャー)とその構成要素を解説してきた。

 だが実際にDXを実行するには、論理的なデジタルアーキテクチャーだけでなく情報システムを動かす人々も重要である。そこで今回は、デジタルアーキテクチャーを実現する組織・人材にどういった要件が求められるかを見ていこう。

不確実性の高い状況に耐え得る組織機能が必要に

 従来、情報システムに関わる組織は、あらかじめ明確に決まっているユーザーニーズに対応するために適切な品質・コストのIT化(デジタル化)を進めてきた。

 しかし、ビジネスを取り巻く情勢や顧客ニーズが刻々と変わる昨今では、こうした組織機能(組織として備える機能)だけでは事業に対応しきれなくなってきた。

 不確実性の高い状況に迅速に対処するための組織機能として、新たに確立が求められているのは以下の5項目である。

●デジタルビジョン構想
 全社的なデジタル化の旗振り役として、デジタルビジョンを策定し、デジタル化の目標を定め、企業全体のデジタル戦略の方向性を策定する機能。組織内にこの機能がないと、多数のデジタル化プロジェクトが「立ち上がってはうまくいかずに消える」ことを繰り返してしまいがちだ。これを避けるためには、あらかじめ全社のデジタル戦略を策定して社内に周知し、それに沿って個々の企画を動かしていくことが重要である。

●デジタル事業創発
 デジタル事業を新たに生み出す機能。長期的な視点で自社が社会や生活者に提供できる価値を考え、その価値を反映したデジタルサービスを企画する。そして、サービスを実現するためのプロダクトを開発する。ユーザーの体験価値を最大化するため、楽しさ、快適さ、安心、満足などを感じさせるユーザビリティーの実現を目指す。こうした開発を迅速かつ柔軟に進めていくには、データ活用が重要な役割を果たす。

●既存事業のデジタル化
 業務のデジタル化によって、既存事業の効率や品質を大幅に向上させる機能。一般に、このような社内向けのデジタル化は情報システム部門が担当している。経営・事業上の課題を解決するためのシステム改善の方針を作成し、適正な品質とコストで、可用性が確保されたサービスを提供する。

●デジタルアーキテクチャー・デザイン
 デジタルサービスが稼働するための企業システム全体のデジタルアーキテクチャーを描く機能。企業ごとに異なるニーズや課題を洗い出し、古いシステムとの共存・連携も考慮しつつ、自社に合ったデジタルアーキテクチャーを設計・構築・運用する。

●共通機能
 デジタルサービスを提供するうえで必要となる、基盤のような必須機能。すでに上で説明した4項目の機能全てに共通して必要となる。以下に、いくつか想定される共通機能を挙げた。

・他社とのパートナーシップの推進(パートナリング推進)
・セキュリティーやAI(Artificial Intelligence、人工知能)倫理の検討などデジタル化に伴うリスクの管理(デジタルリスク管理)
・投資・コスト、人材などデジタル化に必要なリソースの管理(デジタル投資・コスト管理、デジタル人材管理)

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