情報システムのDX(Digital Transformation)を推進する際、今日ではクラウドサービス(以下、クラウド)の活用は必須といえる。とはいえオンプレミス環境の既存システムをクラウドに移行する場合、単純にインフラ部分だけを乗り換えてもなかなかうまくいかない。インフラ上で動作するアプリケーションも、クラウドに適した設計にしておく必要がある。

 このようにインフラ、アプリケーションともにクラウドの利用を前提に、クラウドに最適化されたシステムを「クラウドネーティブなシステム」と呼ぶ。システムをクラウドネーティブ化する目的としては、大きく以下の2点がある。

●運用負荷の軽減
一般にクラウドネーティブなシステムではインフラ構築やアプリケーションのリリースなど、従来は人手をかけていたさまざまな作業を自動化する。現場のエンジニアにとっては運用負荷が減り、その他の業務に注力できる。

●アジリティー、スピードの向上
自動化を進めることでソフトウエア開発からリリースまでにかかる時間を短縮したり、頻繁な改修に対応しやすくなったりする。情報システム部門の手間が省けるだけでなく、ビジネス部門にとっても「企画を思いついたらすぐにリリースできる」といったメリットがある。

 今回は、クラウドネーティブとはそもそもどんなシステムを指すのか、また自社システムをクラウドネーティブ化する際に何に注意すべきかを見ていこう。

 「クラウドネーティブとは何か?」という定義については、クラウドネーティブなシステムの普及推進を目指す非営利団体で、Linux Foundationのプロジェクトの1つである「Cloud Native Computing Foundation(以下、CNCF)」が「CNCF Cloud Native Definition v1.0」という文書として公開している。クラウドネーティブの定義と関連用語を一通り盛り込んだ文書なので、目を通しておくとよいだろう。

 それによると、クラウドネーティブな技術は「スケーラブルなアプリケーションを構築および実行するための能力を組織にもたらします」(CNCFの文書から引用)という。つまり、単純にクラウドに移行しただけではクラウドネーティブにならない。インフラだけでなく、アプリケーションのレベルから高い拡張性を持つ、スケーラブルなシステムを設計する必要がある。また「能力を組織にもたらします」と組織が獲得するメリットに触れている点から、システムを運用するプロセスや、情報システムの運用体制・組織も必要に応じて見直すのが望ましいと考えられる。

「回復性」「管理力」「可観測性」「疎結合」がカギ

 CNCFの定義をもう少し詳しく見てみよう。CNCFは、クラウドネーティブなシステムの特徴として、「回復性」「管理力」「可観測性」「疎結合」の4項目を挙げている。これらを「自動化」技術と組み合わせることで、効率的かつ予測通りにサービスなどのリリースができるというのだ。

 4項目のうち「疎結合」については、本特集シリーズのマイクロサービスに関する記事で解説した。

 ここでは、以下に挙げたCNCFの定義の残り3項目と、それらを支える「自動化」について詳しく解説する。

〔1〕回復性
〔2〕管理力
〔3〕可観測性
〔4〕自動化

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