(出所:123RF)
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 サーバー仮想化は、一般的に1台のサーバーに複数の仮想的なサーバーを作成し個別にOSを動作させる技術である。サーバーのリソースを効率的に利用し、システム全体の可用性を高めることもできる。

 本記事ではサーバー仮想化とは何か、メリットとデメリット、基本的な機能、料金相場、活用のポイントを、仮想化技術に造詣が深い未来科学応用研究所の志茂 吉建氏が分かりやすく解説する。併せて、日経クロステックActiveの記事から、代表的な製品や事例などを紹介する。

初回公開:2022/4/18
*「1. サーバー仮想化とは」「2. サーバー仮想化を導入するメリットとデメリット」「3. サーバー仮想化の基本的な機能」「5. サーバー仮想化の製品・サービス分類と価格相場」「6. サーバー仮想化を活用する上でのポイント」は志茂 吉建氏が執筆

1. サーバー仮想化とは

 サーバー仮想化とは、1台の物理サーバーを複数の仮想サーバーに分割して、汎用OSを動作させることを指す。1台の物理サーバーにマルチコアのCPUを採用し、大容量メモリーを搭載することで実現する。

(出所:123RF)
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 複数の物理サーバーをあたかも1つのOSで動作させる構成を採ることも可能だ。この構成については、「2. サーバー仮想化を導入するメリットとデメリット」と「3. サーバー仮想化の基本的な機能」で解説する。

 サーバーを仮想化*1するには、「ハイパーバイザー」と呼ばれる仮想化ソフトを導入する必要がある。ハイパーバイザー上で仮想マシンを作成し、その仮想マシンに汎用OSを動作させることが可能となる。

*1 1台の物理サーバーを複数の仮想的なサーバーに分割する方法には、ハイパーバイザー型のほかホストOS型、コンテナ型などがある。昨今の業務システムでは、「サーバー仮想化」はハイパーバイザー型を指すことがほとんどのため、本記事はハイパーバイザー型のサーバー仮想化に絞って解説する。

2. サーバー仮想化を導入するメリットとデメリット

 サーバー仮想化の導入により、企業にもたらされるメリットとデメリットは以下の通りだ。

サーバー仮想化のメリット

(1)サーバーリソースの効率利用

 1台のサーバーにマルチCPUと大容量メモリーを搭載し、仮想化により複数の汎用OSを動作させることで、サーバーのリソースを効率的に利用できる。

(出所:123RF)
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(2)可用性の向上

 複数台のサーバーでクラスターを構成することにより、仮想マシンの可用性向上が可能となる。可用性の要件にもよるが、OS単位で複雑なクラスターソフトウエアを導入する必要はない。

(3)バックアップなど管理の容易さ

 バックアップソフトウエアを導入することで、物理サーバーの場合よりも簡単にバックアップの設定ができる。BCP対策などにも対応した仮想サーバーのバックアップツールも存在する。

サーバー仮想化のデメリット

(1)仮想マシン管理の複雑化

 1台のサーバーに複数の汎用OSが動作するため、どの仮想マシンの汎用OSにどのアプリケーションが動作しているかを管理する必要がある。

(2)コストの発生

 サーバー仮想化のためにハイパーバイザーの導入が必須となる。このハイパーバイザーに商用製品を採用すると、コストが発生する。複数の物理サーバーにハイパーバイザーを導入する場合は、ハイパーバイザーや仮想マシンを効率的に管理するためのツールが必要となる。

3. サーバー仮想化の基本的な機能

 組織がサーバー仮想化を実践するために、サーバー仮想化システムが備える機能は以下の通りである。

(1)サーバーの分割

 ハイパーバイザーを導入したサーバーは、CPUやメモリー、HDD、ネットワークなどを仮想化した仮想マシンに分割でき、仮想マシンごとに汎用OSを動作させられる。汎用OSのCPU利用率は、それほど高くならない場合が多く、複数の仮想マシンでCPUを共有できる。

 ただしメモリーは他の仮想マシンと共有できないため、サーバー上で動作する複数の仮想マシンが利用できるメモリーの総和は、サーバーの物理メモリー搭載量が上限になる。仮想ディスクはローカル接続のHDDのほか、他のハイパーバイザーが動作するサーバーと共有するストレージ上に配置できる。ネットワークでは、仮想マシンごとに個別のMACアドレスを持つことが可能で、仮想HUBを経由してネットワークに接続する。

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(2)複数サーバーの統合

 ハイパーバイザーを導入した複数のサーバー(おおむね3台以上)を統合してクラスター構成を取ると、個々の仮想マシンの可用性を向上させられる。仮想マシンごとの負荷状況に応じて、配置するサーバーを自動的に決定し、仮想マシンの動作を停止せずにサーバー間を移動するといった運用が可能となる。

 システム全体の負荷が増えた場合は、新たに物理サーバーをクラスターに追加することでリソースを増強できる。

(出所:123RF)
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(3)ネットワークとストレージの仮想化

 ネットワークとストレージも仮想化される。ネットワークは、ハイパーバイザー上で仮想化されるのはレイヤー2までだが、追加ソフトウエアの導入によりレイヤー3以上まで仮想化に対応させられる。ストレージは、仮想マシンごとにディスク容量を割り当てることが可能だ。その際には、物理ディスク以上の容量を仮想ドライブに設定可能な「シンプロビジョニング」などの技術を利用できる。

4. サーバー仮想化の代表的な製品・サービス

 ここでは、サーバー上で動作する仮想化の要であるハイパーバイザー4製品を挙げる(日経クロステック Active調べ)。

 (1)VMware vSphere:VMware VMware vSphereのWebページ 、 (2)Microsoft Hyper-V :Microsoft Microsoft Hyper-Vの仮想化のドキュメントWebページ 、 (3)Citrix Hypervisor: Citrix Citrix HypervisorのWebページ 、 (4)Red Hat Virtualization:RedHat RedHat VirtualizationのWebページ である。

5. サーバー仮想化の価格相場

 VMware vShereの構成例を基に、必要なソフトウエアとハードウエアを含めて試算したところ、1000万~1200万円程度となった(表1表2)。個々の仮想マシンをCPU 2Core、メモリー4GB、HDD 100GBと仮定し、可用性などを考慮すると、この構成ではおよそ100台前後の仮想マシンを作成できる。

 5年運用とすると、1仮想マシン当たり月額2000円程度のコストとなる。この構成とは別に、RHEL(Red Hat Enterprise Linux)やWindows Serverなどを利用する場合は、OSライセンス料が必要となる。

表1●ソフトウエア
名称保守数量
VMware vSphere ESXi Enterprise Plus 2CPU5年3
vCenter Server Standard5年1
表2●ハードウエア
名称保守数量
Intel Xeon ベースサーバー CPU 12core x 2 メモリー 256GB5年3
L2 スイッチ 通信用 1GB/s5年2
L2 スイッチ iSCSI用 10GB/s5年2
ストレージ RAID 構成/iSCSI 容量10TB 程度5年1

6. サーバー仮想化を活用する上でのポイント

 サーバー仮想化の構築に当たって、(1)ハードウエアの可用性、(2)ハイパーバイザーや管理ツールの使いやすさの2点に注意を払う必要がある。

(1)ハードウエアの可用性

 サーバーを仮想化すると、管理が複雑になるというデメリットがあることを上で説明した。特に仮想化したサーバーにトラブルが発生すると、単一のサーバーよりもトラブルシュートが複雑になることが予想される。このため、導入時には可用性の高いサーバーやネットワーク機器、ストレージなどを選択することがポイントになる。

 サーバーは電源を二重化しており、ファンなども冗長化していることが欠かせない。ネットワーク機器でもケーブル接続に限らず、電源とファンなどもサーバーと同様に冗長化を意識する必要がある。ストレージもRAID構成を採り、接続や電源、ファンの冗長化が必須となる。

(出所:123RF)
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(2)ハイパーバイザーや管理ツールの使いやすさ

 サーバー仮想化を実現するハイパーバイザーや管理ツールの使いやすさについても事前に確認しておくべきだろう。最近は、HTML5を使ったWebベースの管理ツールが増えており、視認性や操作性が大きく進化した。

 次に、意識すべきはバージョンアップの容易さである。脆弱性に対する攻撃が強まっている今、ハイパーバイザーや管理ツールでも脅威に対するアップデートが頻繁に提供されている。このアップデートに対応する際の、作業の容易さは重要なポイントとなる。例えば、ダウンタイムなしにアップグレードする構成など、工夫を凝らすことも可能だ。

7. サーバー仮想化の運用面での進化

 以下では、サーバー仮想化の導入後に発生するであろう運用面の進化の考え方を整理する。具体的には、(1)システム運用と業務アプリ運用の分離、(2)技術支援サービスの導入、そして(3)クラウドサービスとの比較である。

(1)システム運用と業務アプリ運用の分離

 現在、日本企業が導入している仮想化システムの多くは、会計や顧客管理、スケジュール管理といった業務ごとに最適したかたちで構築されていると推測される。業務ごとに導入したシステムは、当然のことながら担当の業務部門が個別に管理する必要がある。

 ただし個別に仮想化したシステムが増えると、管理の手間が社内に分散し、ネットワーク設計などにも問題が発生する可能性が高い。こうした場合、統合基盤を構築し、その上に個別システムを整備することで、効率的なリソース利用を目指すことも選択肢となる。

 この基盤を発展させると、社内クラウドサービスというシステム構成も現実を帯びてくる。個別の業務部門によるアプリーション運用と、システム部門によるサーバー仮想化をベースとしたインフラ運用を切り離すものだ。

(出所:123RF)
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(2)技術支援サービスの導入

 会社の規模にもよるが、インフラ統合のハードルが高いと考える企業には、SIerによる技術支援サービスの導入が選択肢となる。具体的には、サーバー仮想化で得られるメリットの定量的な算定や必要なソフト・ハードの見積もり、システムの導入と構築、保守運用、さらにはデータセンターを使ったシステム運用などを、SIerに依頼するというものだ。

(3)クラウドサービスとの比較

 (1)でサーバーを仮想化したインフラを統合し、データセンターで運用する構成とした後に、クラウドサービスを利用した場合との比較をする。

 特に留意すべきは費用面である。クラウドサービスを利用して予想外の料金を請求される例は少なくない。自社運用では、費用には基本的に変動要素がないため、毎月発生する費用を算出しやすい。

 さらにクラウドサービスにはサービス停止のリスクがある。事業者選びの際には、料金だけでなくシステムの可用性にも意識を払う必要があるだろう。

 サーバー仮想化の自社運用とクラウド利用のメリットとデメリットを比較して、自社にとって最適なシステムのあり方を決める必要がある。

8. サーバー仮想化の代表的な事例

9. 注目のサーバー仮想化関連製品とサービス

 サーバー仮想化を導入して現場で活用するには、様々な手助けをしてくれる製品やサービスを利用するとよりスムーズに進む。以下では、注目のサーバー仮想化関連製品とサービスを紹介する。

NTTコミュニケーションズ / ニュータニックス

伊藤忠テクノソリューションズ

インターネットイニシアティブ

富士通

NTTコミュニケーションズ

エルテックス

ネットアップ

アマゾン ウェブ サービス ジャパン

レッドハット

10. サーバー仮想化の新着プレスリリース

志茂 吉建(しも・よしたけ)
未来科学応用研究所
志茂 吉建(しも・よしたけ) 1996年にシーティーシー・テクノロジーに入社。プラットフォーム、ストレージ、ミドルウエア関連のサポートやプロフェッショナルサービスに従事。2007年下半期から、VMware仮想化関連のサービス開発やコンサルティングなどを担当。2011年に仮想化関連書籍などを共同執筆。2013年4月から未来科学応用研究所を設立し、仮想化/OSSコンサルタントとして活動中。