(出所:123RF)
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 MA(マーケティングオートメーション)は、マーケティング部門の主業務である良質の商談を営業部門や販売代理店に供給する「デマンドジェネレーション」を、プラットフォームとして支えるツールである。2014年に多くのサービスの国内販売が始まってから、利用企業が伸びているが、導入した効果が得られないという事例も少なくない。

 本記事ではBtoB企業を対象に、MAとは何か、メリットとデメリット、基本的な機能、料金相場、活用のポイントを、シンフォニーマーケティングの庭山 一郎氏が分かりやすく解説する。併せて、日経クロステックActiveの記事から、代表的な製品や事例などを紹介する。

初回公開:2022/5/24
*「1. MAとは」「2. MAを導入するメリットとデメリット」「3. MAの基本的な機能」「5. MAの料金相場」「6. MAを活用する上でのポイント」は庭山 一郎氏が執筆

1. MA(マーケティングオートメーション)とは

 MAとは、SFA(営業支援システム:Salesforce Automation)の前工程を担当し、営業担当者や販売代理店に良質な商談を安定供給するためのツールである。

 かつてSFAはその名前から、あたかも営業活動を自動化するツールと勘違いされた。同様に、MAはマーケティングを助けてくれるツールではあるが、マーケティング活動全般を自動化するわけではない。

 MAができることは主に、データマネジメント、コンテンツマネジメント、スコアリングなどで、それらを組み合わせて様々なマーケティングキャンペーンを設計し実施できる。そういう意味では企業のマーケティング活動全般ではなく、営業案件を創出するデマンドジェネレーション活動に特化したツールといえる。

(出所:123RF)
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 米国では2000年から普及が始まったMAだが、日本では約15年遅れて2014年に普及が始まった。それから約8年が経過した今、海外産と国産を合わせると15以上のサービスを利用できるようになり、導入企業数は累計で1万社を超えたといわれている。

 しかし、MA本来の役割である「有望な商談の安定供給」までを実現できている企業は少ない。多くは、メールやメールマガジンの配信ツールにとどまっている。

MA誕生の契機となった「デマンドジェネレーション」

 1990年代に米国でBtoB企業にSFA/CRMが普及し、営業案件をパイプライン(案件化してから受注・失注、納品するまでのプロセス)で可視化するようになると、1つの問題が提起された。パイプライン上の「案件の減衰」である。

 受注までのプロセスに、初回訪問を「F5」、そこからの案件化を「F4」、製品やサービスのサンプル提示を「F3」、契約条件の擦り合わせを「F2」、最終見積もり提示を「F1」、受注を「F0」といったステータスを付与して、パイプラインを設計したとしよう。当然ながら、各ステータスの案件数は受注に近づくほど少なくなって(減衰して)いき、増えることはない。例えば「F0」の数が「F4」を上回ることはあり得ない。

 営業研修や営業資料などの工夫で減衰率を多少は抑えられるかもしれないが、それでも限界があり、前工程を後工程が上回ることはない。そこで分母を増やす、つまり上流の案件数を増やすことで、通常の減衰率でも売り上げ増大に成功した企業が現れた。これが1990年代後半に米国で起こった「デマンドジェネレーション」というムーブメントである。

 具体的には、まず大量の社内外で手に入るすべての顧客・見込み客(リード)の個人情報を入力し、名寄せをした上で企業と個人をひも付け、リードデータベースを整備する。そこにメールなどでコミュニケーションを取り、メールへの反応やコンテンツへのアクセスといった行動から、興味関心を持つ人を絞り込む。さらにメールやコール(電話)によってニーズを確認し、「訪問の承諾(アポイントメント:アポともいう)」が採れた時点でMQL(Marketing Qualified Lead)としてパイプラインに登録する(ここで、上記のステータスの「F5」につながる)。

 こうした手順を導入した企業は、営業担当者をアポ取り業務から解放した。結果として訪問商談件数が飛躍的に伸び、売り上げの増大に成功した。

(出所:123RF)
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 画期的な成果を生んだこの手法だが、実は“中の人たち”はとても大変だった。業務はすべて手動で、しかも何種類ものツールを使うため、「いちいちCSVファイルで書き出してから、ツール間を移動して、データをメンテナンスする」といった膨大な作業をこなさなくてはならなかった。

 この状況を見て、カナダのトロントにいた若者3人が「デマンドジェネレーションをワンプラットフォームで実行できるツールを作ったら売れるかも」というアイデアを思い付いた。こうして誕生したのが、2000年にリリースされた世界最初のMA「Eloqua(現在のOracle Eloqua Marketing Automation)」である。

 MAの前工程には「ターゲットとなる顧客の情報を収集する」というリードジェネレーション活動がある。具体的には展示会やセミナー(ウェビナー)、デジタル広告、コール、チャット、動画を使った製品・サービスの説明、名刺のデジタル化サービスなどのことで、それぞれに特化したツール群が存在している。これらもMAとは区別して考える。

 なお、MAは2000年以降に普及した新しいソリューションなので、圧倒的にクラウド型が多い。ただし、少数ながらオンプレミス型も存在する。

2. MAを導入するメリットとデメリット

 MAの導入により、企業にもたらされるメリットとデメリットは以下の通りだ。

MAのメリット

(1)デマンドジェネレーション作業の一部を支援できる

 マーケティング担当者のデマンドジェネレーション作業の中でも最も難易度が高く、事故の原因となるのはデータマネジメントである。日本の個人情報保護関連法令や欧州のGDPR(一般データ保護規則)などを遵守しながら、個人の行動と所属する企業の属性情報から有望な見込み客を探し出すには、常にデータを健全で洗練された状態に維持しなければならない。これは、MAを使わなくては不可能に近い作業である。

MAのデメリット

(1)自動化できる業務範囲の限界

 マーケティング活動のうちMAで自動化できる範囲は限られる。その事実を誤解される例が後を絶たない。

(2)MAを使いこなせる人材の不足

 MAそのものの操作の難易度は高くないが、マーケティング活動全般の知識を持ってMAを使いこなせる人材は多くない。

(出所:123RF)
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(3)営業とマーケティング部門の不仲の原因になる

 日本の営業部門にいる人の多くはマーケティング部門と連携して仕事をした経験がない。そうした企業で、「MAを導入したから営業部門にある名刺情報を統合します」、と言えば、多くの場合で営業は反発し「俺の名刺に何をするつもりだ?」となる。

 MAの導入が部門間の不仲の原因にならないよう、営業部門への説明や根回しは、マーケティング部門が意識すべきとても重要なプロセスである。

3. MAの基本的な機能

(1)全社の顧客データの統合

 全社に分散して、様々な状態やフォーマットで格納されている顧客データを統合し、名寄せやひも付け、営業対象外となるデータの排除などにより、法令を遵守しながらマーケティング活動ができる状態に整備する。

(出所:123RF)
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(2)顧客のスコアリング

 顧客やその所属企業の業種、売り上げ、従業員数などの「属性情報」と、企業に所属する個人のメールやWebページの閲覧などの「行動」をデータ化して解析し、スコアリング(点数化)することで、特定の情報を求めている有望な見込み客を見つけ出す。

(3)キャンペーン設計と実行

 マーケティングキャンペーンを実行する際に、「メールを読んだ顧客には、さらに詳しいメールを送る」「イベントに来場した顧客だけに、割引をオファーする」といったシナリオを設計し、その実行を支援できる。

4.代表的なMA

 代表的なMAの例として、8サービスをを挙げる(日経クロステック Active調べ)。

(1)Marketing Cloud Account Engagement(旧 Pardot):セールスフォース・ジャパン Marketing Cloud Account Engagement (旧 Pardot)のWebページ 、 (2)Oracle Eloqua Marketing Automation:日本オラクル Oracle Eloqua Marketing AutomationのWebページ 、 (3)Adobe Marketo Engage:アドビ Adobe Marketo EngageのWebページ 、 (4)Marketing Hub:HubSpot Japan Marketing HubのWebページ 、 (5)List Finder:Innovation List FinderのWebページ 、 (6)SATORI:SATORI SATORIのWebページ 、 (7)SHANON MARKETING PLATFORM:シャノン シャノンのWebページ 、 (8)Synergy!:シナジーマーケティング Synergy!のWebページ である。

5. MAの料金相場

 MAは基本的にマーケティング部門が使うツールである。SFAのようにライセンス数ではなく、多くの場合はデータ件数やデータ容量、使える機能などで料金が決まる。

(出所:123RF)
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 クラウド型の場合、低価格帯のサービスだと年間で100万円以内、ハイエンドのサービスでも年間で1000万~1500万円程度となる。

6. MAを活用する上でのポイント

 MAを活用する際に、組織が意識すべきポイントを以下に整理する。

(1)メール配信ツールではない

 MAを導入してもメール配信ツールで終わらせては意味がない。MA導入の目的は「良い商談を営業に安定供給して、売り上げに貢献すること」である。良質な案件を安定供給するために必要なのがマーケティングのナレッジであり、その活動を支援するためにMAが必要となる。

 マーケティングナレッジがなければMAは単なるメール配信ツールになってしまう。そうしないためにも、企業内のマーケティングナレッジの育成に投資する必要がある。

(出所:123RF)
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(2)MAの操作とマーケティング活動は別ものと意識する

 MAを活用するデマンドセンターの要員に最も重要な要素は、営業部門とのコミュニケーションスキルである。そのため営業部門の考え方を理解している営業出身者などが適任といえる。

 マーケティングのツールであるMAの操作ができることと、マーケティングができることは本質的に別である。Wordというアプリケーションを操作できることと、人を感動させる文章が書けることがまったく別なのと同じである。

7. MAの代表的な事例

8. 注目のMA関連製品とサービス

 MAを導入して現場で活用するには、様々な手助けをしてくれる製品やサービスを利用するとよりスムーズに進む。以下では、注目のMA関連製品とサービスを紹介する。

シナジーマーケティング

NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション

9. MA関連の新着プレスリリース

庭山 一郎(にわやま・いちろう)
シンフォニーマーケティング 代表取締役
庭山 一郎(にわやま・いちろう) 1990年シンフォニーマーケティングを設立。1997年よりBtoBにフォーカスした日本初のマーケティングアウトソーシング事業を開始。製造業、IT、建設業、サービス業、流通業など各産業の大手企業を中心に国内・海外向けのマーケティングサービスを提供している。海外のマーケティングオートメーションベンダーやBtoBマーケティングエージェンシーとの交流も深く、長年にわたって世界最先端のマーケティングを日本に紹介している。2020年8月に『BtoBマーケティング偏差値UP』(日経BP)を刊行、そのほか著書多数。中央大学ビジネススクール客員教授を兼ねる。