(出所:123RF)
(出所:123RF)

 ノーコード/ローコード開発が注目されている。ITベンダー任せにせず自社主導でアプリケーションを開発する「内製化」が企業に求められているからだ。事業環境や顧客ニーズが急速に多様化、複雑化しつつある現在、企業は自社を取り巻く環境の変化をいち早く捉え、ビジネスに反映させる必要がある。そのためには、柔軟でスピーディーな開発が必須となる。アプリケーション開発を簡単にしてくれるノーコード/ローコードはうってつけというわけだ。

 本コラムでは2回にわたり、ノーコード/ローコード開発について解説する。第1回の本記事ではノーコードを取り上げる。ノーコードとは何か、ノーコードのメリットとデメリット、基本的な機能、料金相場、活用のポイントなどを、野村総合研究所の平井康大氏が解説する。併せて、代表的な製品や、日経クロステック Activeの記事で取り上げられた事例などを紹介する。

初回公開:2022/7/14
*「1. ノーコードとは」「2. ノーコードを導入するメリットとデメリット」「3. ノーコード開発ツールの基本的な機能」「5. ノーコード開発ツールの料金相場」「6. ノーコード開発ツールの選定・活用のポイント」は平井康大氏が執筆

1. ノーコードとは

 「ノーコード」は、プログラム開発言語を使ったコーディングを全く行わず、その代わりにGUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)を使ってアプリケーションを開発することを言う。このような開発手法を「ノーコード開発」と呼ぶ。

 プログラミングスキルを持つIT部門の技術者がソースコードを極力記述せず、GUIを使ってアプリケーションを開発する「ローコード開発」と区別する。

 ノーコード開発は、現場のニーズをよく知る業務部門の担当者が、プログラミングの経験や知識はなくても自らアプリケーションを開発できるようにする。あらかじめ用意されたテンプレートや機能ごとの部品をドラッグ&ドロップで配置していくだけで、アプリケーションを作成できる。

 誰でもアプリケーションを作成できる使いやすさがあるが、用意された機能がベースとなるため、設計の汎用性は低く、機能のカスタマイズには限界がある。ペーパーレス化など、汎用的な機能で業務を改善したいケースに適していると言える。

2. ノーコードを導入するメリットとデメリット

 ノーコードを導入するメリットとデメリットは、以下の通りである。

ノーコードのメリット

(1)プログラミングの知識が不要
 プログラミング知識やITスキルのない人でも簡単に開発ができる。そのため、業務部門単独でのアプリ開発が可能となる。

(2)速く安く作れる
 従来の開発ではソースコードを書く必要があったが、ノーコード開発ではこれが不要になるため、速く安く作ることができる。また、業務部門内で開発が完結するため、スキルを持ったエンジニアの手を借りずに済む分、開発コストを削減できる。

(3)IT部門への依存からの脱却
 ノーコードを導入することで、IT部門の限られたリソースに依存することなく、現場主体でアプリケーションの開発と運用を進められる。業務部門がIT部門にアプリケーション開発を要望しても、IT部門の都合で満足な対応をしてくれない場合が多い。こうした課題の解決につながる。

(4)現場とのミスマッチ解消
 IT部門や社外の開発者が業務部門のニーズを十分に理解していないために、できあがったアプリは現場の求めていたものとは違った―。このような問題が生じることは珍しくない。ノーコードの導入で、現場を知る当事者が思い通りのアプリを作成できる。

ノーコードのデメリット

(1)自由度や拡張性が低い
 ノーコードでは、用意されているテンプレートに部品を組み合わせてアプリケーションを開発する。独自のロジックやデータ連携などを実装する追加のコーディングを原則できないようにしている。このため、ゼロからコーディングするスクラッチ開発はもちろん、ローコードと比べても、デザインや機能面での自由度や拡張性は低い。

(2)大規模開発には向いていない
 ノーコードはテンプレートで用意したテンプレートや部品がベースとなるため、機能のカスタマイズには限界がある。大規模開発で求められる複雑な機能や、機能間の連携に対応できない場合が多く、不向きと言える。

(3)習熟までの時間とコストがかかる
 ノーコードはプログラム不要ではあるものの、ツール特有の操作方法を覚えるまでにある程度時間を要する。ローコードに比べ海外製のサービスが多く、日本語のサポートがないものも多い。業務部門の担当者がアプリケーションを開発できるように習熟するまで、時間とコストがかかることを念頭に置いておきたい。

3. ノーコード開発ツールの基本的な機能

 ノーコード開発ツールが備える主な機能は以下の通りである。

(1)テンプレート機能
 勤怠管理や顧客管理などの事務処理を中心に、目的・用途に合わせた多くのテンプレートを用意している。プログラミングスキルがなくても、基本的な機能であればテンプレートを利用することで開発が可能である。

(2)コンポーネント機能
 テンプレートに組み込むボタンやドロップダウンなどの部品(コンポーネント)を選択し、ドラッグ&ドロップで追加する機能である。様々な部品があり、直感的な操作で画面を構築できる。

(出所:123RF)
(出所:123RF)

(3)データベース機能
 アプリケーションにひもづくデータベースを新規作成・更新・削除できる機能である。多くのツールでは、Excelファイルを読み込むことで簡単にデータベースと連携したアプリケーションを生成できる。

4. 代表的なノーコード開発ツール

 代表的なノーコード開発ツールとして、以下のサービスを挙げる(日経クロステック Active調べ)。

(1)Amazon Honeycode:アマゾン ウェブ サービス ジャパン Amazon HoneycodeのWebページ 、 (2)AppSheet:グーグル AppSheetのWebページ 、 (3)Bubble:Bubble Group Bubble:Bubble GroupのWebページ 、 (4)Adalo:Adalo AdaloのWebページ 、 (5)kintone:サイボウズ kintoneのWebページ 、 (6)Informatica Cloud Data Integration:インフォマティカ・ジャパン Informatica Cloud Data IntegrationのWebページ 、 (7)Platio:アステリア PlatioのWebページ 、である。

5. ノーコード開発ツールの料金相場

 ノーコード開発ツールはクラウド型のサービスがほとんどで、現場レベルにおけるスモールスタートが可能である。サーバーなどの機器調達費用や管理コストは不要であり、初期費用なしで1カ月単位から契約できる。従って、現場レベルでのスモールスタートが可能である。製品ごとに作成可能なアプリ数や利用できる機能などによって料金が異なる。

 機能が限定されたベーシックなプランであれば、無料で利用可能か、1ユーザー当たり月額数百円程度で利用可能である。より多くの機能が利用できるプランでも、1ユーザー当たり月額数千円程度の料金となる。ただし、製品ごとに料金体系は大きく異なるため、ノーコードツール導入の際は、まず各製品ベンダーに問い合わせることをおすすめする。

6. ノーコード開発ツールの選定・活用のポイント

 ノーコード開発ツールを選定・活用する際に意識すべきポイントを、以下に整理する。

(1)実現できることの把握
 先述の通りノーコード開発ツールは製品ごとに利用できる機能が異なるため、実装可能な機能範囲や拡張性を事前に認識した上で、製品を選定する必要がある。また、ノーコード開発ツールを導入する目的や、導入後の具体的なゴールを明確にすることも重要だ。それによって、必要な機能を備えた製品を選定できる。

(2)サポート体制の構築
 品質を担保した上でノーコード開発ツールを定着・展開するためには、実際に利用する業務部門がツールの操作方法の学習や、要件整理、運用を実行できるように、管理・サポートする体制を社内に構築する必要がある。

7. ノーコードの代表的な事例

8. 注目のノーコード関連製品とサービス

 ノーコードを導入して現場で活用するには、様々な手助けをしてくれる製品やサービスを利用するとよりスムーズに進む。以下では、注目のノーコード関連製品とサービスを紹介する。

AI inside

OutSystemsジャパン

インフォマティカ・ジャパン

アステリア

9. ノーコードの新着プレスリリース

平井 康大(ひらい・こうだい)
野村総合研究所 システムコンサルティング事業本部 シニアアソシエイト
平井 康大(ひらい・こうだい) 主に製造業を対象とした、デジタル活用による業務変革支援、PMO支援などに携わる。 ローコードツールを活用したシステム開発やローコードツールに関するレポート執筆の実績・経験を持つ。