(出所:123RF)
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 ノーコード/ローコード開発が注目されている。ITベンダー任せにせず自社主導でアプリケーションを開発する「内製化」が企業に求められているからだ。事業環境や顧客ニーズが急速に多様化、複雑化しつつある現在、企業は自社を取り巻く環境の変化をいち早く捉え、ビジネスに反映させる必要がある。そのためには、柔軟でスピーディーな開発が必須となる。アプリケーション開発を簡単にしてくれるノーコード/ローコードはうってつけというわけだ。

 本コラムでは2回にわたり、ノーコード/ローコード開発について解説する。前回のノーコードに続き、第2回の本記事ではローコードを取り上げる。ローコードとは何か、ローコードのメリットとデメリット、基本的な機能、料金相場、活用のポイントなどを、野村総合研究所の平井康大氏が解説する。併せて、代表的な製品や、日経クロステック Activeの記事で取り上げられた事例などを紹介する。

初回公開:2022/7/15
*「1. ローコードとは」「2. ローコードを導入するメリットとデメリット」「3. ローコード開発ツールの基本的な機能」「5. ローコード開発ツールの製品・サービス分類と価格相場」「6. ローコード開発ツールを活用する上でのポイント」は平井康大氏が執筆

1. ローコードとは

 「ローコード」は、IT部門などのエンジニアが GUI(グラフィカル・ユーザー・インターフェース)を使うなどして、プログラムのソースコードを極力記述せずにアプリケーションを開発することを言う。このような開発手法を「ローコード開発」と呼ぶ。

 現場のニーズをよく知る業務部門の担当者がプログラム開発言語を使わずにアプリケーションを開発する「ノーコード開発」と区別する。

 ローコード開発は、プログラミングスキルを持つIT部門の技術者が、より簡単に短期間でアプリケーションを開発するために使う場合が多い。あらかじめ用意した機能を利用できるようにして、従来よりも圧倒的に少ないコーディングでアプリケーションを開発できる

* ローコードによるアプリケーション開発の本格的な「内製化」を目指すためには、IT部門が自分たちだけでなく、業務部門を巻き込んで一緒に開発を進める必要が出てくるだろう。ただし、その場合も、IT部門がローコードを使って開発するのが第一歩となる。本稿はローコードに関する入門編の記事として、IT部門がローコードで開発するシーンを前提に解説する。

 コーディングが不要なノーコード開発に対して、ローコード開発は一部でコーディングを必要とする場合が多い。ドラッグ&ドロップでアプリケーションを作成できるが、必要に応じて追加のコーディングをすることで、独自のロジックやデータ連携などを実装できる。ある程度のプログラミングスキルは必要だが、ノーコードに比べて柔軟な開発が可能となる。

 ローコード開発ツールには、高い拡張性を持ったアーキテクチャーや、外部アプリケーションと連携するためのコネクターなどの機能が用意されている。それらを組み合わせることで、社内向けのWebアプリなどの小規模なシステムから、基幹系・ECサイトなど大規模なシステムまでを広範囲に開発できる。ローコード開発ツールの市場はノーコード開発ツールと併せて年々拡大しており、ユーザー企業の導入が急速に進んでいる。

2. ローコードを導入するメリットとデメリット

 ローコードの導入により、企業にもたらされるメリットとデメリットは以下の通りだ。

ローコードのメリット

(1)開発期間・コストの削減
 ローコードの導入により、コーディング量を最小限に抑えられる。そのため、アプリケーションの開発期間を短縮できる。開発を効率化することで、リソースの有効活用が可能となり、結果として開発コストを抑制できるなどの効果がある。

(2)システム化の加速
 (1)のコスト削減により、従来は費用対効果が見込めず見送られていた業務のシステム化が可能になる。さらに開発期間の短縮により、ニーズの変化にも柔軟かつ迅速に対応できる。PoC(実証実験)との相性も良く、アプリケーション開発のPDCAを素早く回すことで業務のシステム化を加速できる。

(3)IT人材の有効活用
 ローコードを導入すれば、アプリケーション開発に要する工数を大幅に削減できる。IT部門の人材不足は多くの会社で深刻化している中、IT部門の担当者は既存システムの運用や改修で手がいっぱいとなり、業務部門からの要望に満足に対応できていない場合が多い。アプリ開発の効率化によって、少ないIT人材を他の業務に振り向けられるようになる。

(4)部門間の連携強化
 ローコード開発では、アプリケーションの開発期間が短いため、開発結果の業務部門とのレビューをすぐに実施できる。開発サイクルの短縮により、開発結果を業務部門に示して意見を基に軌道修正を図り、業務部門を巻き込んだシステム化を進められる。また、ニーズの深掘りや業務部門へのスキルトランスファーなど開発業務以外のことにも多くの時間を充てられるようになる。

(5)セキュリティ対策の効率化
 スクラッチでアプリケーションを開発する場合、自らセキュリティ対策をする必要がある。ローコード開発ツールは、あらかじめセキュリティを検証したアプリケーション開発環境を用意している。安全なテンプレートやコンポーネントを用いたプログラミングの過程で、セキュリティを担保したアプリを開発できる。

ローコードのデメリット

(1)機能に限界がある
 ローコードでは、製品ごとに用意されている部品や機能を組み合わせて開発を行うため、アプリケーションの機能は制限されてしまう。また、アプリケーションのユーザーインターフェース(UI)や処理速度などの非機能性能は利用する製品に依存するため、ユーザー側でカスタマイズすることは難しい。

(2)ある程度の開発知識が必要
 ローコードは、カスタマイズの度合いに応じてコーディングが必要になるため、プログラミングの知識がない人にとっては使用しにくいと感じるかもしれない。ノーコードのように誰でも使えるわけではなく、ある程度の開発知識が必要になる。

3. ローコード開発ツールの基本的な機能

 ローコード開発ツールが備える主な機能は以下の通りである。

(1)テンプレート機能
 勤怠管理や顧客管理などの目的・用途に合わせたテンプレートだけでなく、画面設計などの追加コーディングのためのテンプレートも多く用意している。テンプレートの利用により短時間で開発できる。

(2)コンポーネント機能
 テンプレートに組み込むボタンやドロップダウンなど部品(コンポーネント)を選択し、ドラッグ&ドロップで追加する機能である。ノーコード開発ツールとは異なり、サブルーチンや関数を呼び出すなど、追加コーディングに対応した部品も用意している。

(3)データベース機能
 アプリケーションにひもづくデータベースを新規作成・更新・削除できる機能である。多くのツールでは、Excelファイルを読み込むことで誰でも簡単にデータベースと連携したアプリケーションを自動生成できる。

(4)カスタム機能
 プログラミング言語を使って、部品にひもづくアクションを編集・記述できる。「ボタンを押下した際に関係者へ通知のメールを飛ばす」など、カスタム機能により複雑なロジックの実装が可能となる。

(5)データ連携機能
 ツールに用意されているコネクターを用いることで、顧客管理システムなど外部システムとデータ連携できる。また、作成したアプリケーション間でもデータを連携でき、アプリをまたいだロジックの実装が可能となる。

(出所:123RF)
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4. 代表的なローコード開発ツール

 代表的なローコード開発ツールとして、以下の製品・サービスを挙げる(日経クロステック Active調べ)。

(1)Microsoft Power Apps:日本マイクロソフト Microsoft Power AppsのWebページ 、 (2)Lightning Platform:セールスフォース・ジャパン Lightning PlatformのWebページ 、 (3)Outsystems:Outsystemsジャパン OutsystemsのWebページ 、 (4)Oracle APEX:日本オラクル Oracle APEXのWebページ 、 (5)kintone:サイボウズ kintoneのWebページ 、 (6)Zoho Creator:ゾーホージャパン Zoho CreatorのWebページ 、 (7)Mendix:シーメンス MendixのWebページ 、 である。

5. ローコード開発ツールの料金相場

 オンプレミス型も提供されているが、ローコード開発ツールは基本的にクラウド型のサービスである。そのため、サーバーなどの機器調達費用や管理コストは不要であり、初期費用なしで1カ月単位から契約できる。従って、現場レベルでのスモールスタートが可能である。製品ごとに違いはあるが、作成可能なアプリ数、利用できる機能、利用可能なディスク容量、外部サービスとの連携・拡張機能などのカスタマイズがどこまで可能かによって料金プランが異なる。 

 機能がある程度限定されたベーシックなプランであれば、無料で利用可能か、1ユーザー当たり月額1000円程度で利用可能なため、操作感を知るために試しに使うことが簡単にできる料金設定である。よりカスタマイズ可能なプランであれば、1ユーザー当たり月額数千円~数万円程度の料金が必要となるが、これ一つで本格的な開発に適用できる。ただし、製品ごとに料金体系は大きく異なるため、ローコードツール導入の際は、まず各製品ベンダーに問い合わせることをおすすめする。

6. ローコード開発ツールの選定・活用のポイント

 ローコード開発ツールを選定・活用する際に意識すべきポイントを、以下に整理する。

(1)実現できることの把握
 ローコード開発ツールでは、導入する目的や導入後の具体的なゴールを、IT部門が明確にすることが重要だ。それによって、必要な機能を備えた製品を選定できる。また、ノーコード開発ツールと同様に、ローコード開発ツールも製品ごとに機能や性能が限定されているため、実装可能な機能範囲、外部連携機能、拡張性を事前に認識した上で、製品の選定を行う必要がある。導入前後のサポート体制も、開発を成功に導く上で重要なポイントとなるため、製品選定時に確認しておく必要がある。

(2)ITリテラシーの向上
 IT部門が業務部門にもローコード開発ツールを展開して連携強化することで、さらなる開発の効率化が図れる。そのためには、IT部門が中心となってハンズオン研修や各種ガイドラインの整備、ベストプラクティスの共有などを実施し、組織全体のITリテラシーを向上することが有効である。

(3)サポート体制の構築
 上述の効率化のためには、品質を担保した上でローコード開発ツールをIT部門だけでなく業務部門にも展開し、定着を図ることになる。そのためには、アプリケーションを開発するIT部門に加えて業務部門の担当者に対しても、要件整理から運用まで管理・サポートする体制を構築する必要がある。

7. ローコードの代表的な事例

8. 注目のローコード関連製品とサービス

 ローコードを導入して現場で活用するには、様々な手助けをしてくれる製品やサービスを利用するとよりスムーズに進む。以下では、注目のローコード関連製品とサービスを紹介する。

日本マイクロソフト

OutSystemsジャパン

インフォマティカ・ジャパン

シーメンスデジタルインダストリーズソフトウェア

9. ローコードの新着プレスリリース

平井 康大(ひらい・こうだい)
野村総合研究所 システムコンサルティング事業本部 シニアアソシエイト
平井 康大(ひらい・こうだい) 主に製造業を対象とした、デジタル活用による業務変革支援、PMO支援などに携わる。 ローコードツールを活用したシステム開発やローコードツールに関するレポート執筆の実績・経験を持つ。