事務作業を自動化して、作業時間を80%短縮できる――。「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」は、人工知能(AI)やIoT(インターネット・オブ・シングズ)と並ぶ企業ITの最注目キーワードになっている。RPAとは何か、自動化できること、ビジネスメリット、類似技術との違い、代表的なツール6種類、製品やサービスの価格相場、代表的な事例などを分かりやすく解説。さらに、注目のRPAツールと関連サービスをまとめて紹介する。

 RPAは、導入すると目に見えて作業量が減るうえ、短期で効果を出しやすいのが特徴だ。既存の業務プロセスを大きく変えない導入も可能なため、将来的な業務見直しまでの過渡期であっても業務を効率化ができる。

 こうした背景で、RPAを導入する企業が急増している。その一方で「RPAの正体がよく見えない」「どんな業務でも導入効果が上がるのか疑問だ」「導入するためにどのような作業が必要なのかが分からない」といった声も聞かれる。

初回公開:2021/2/17
最終更新:2021/9/17

目次

1. RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とは
2. RPAで自動化できる業務
3. RPAを導入するメリット
4. RPAとAIは何が違う?
5. RPAとExcelマクロは何が違う?
6. RPAの代表的な機能
7. RPAツールの代表例6種類
8. RPAの価格相場、製品・サービスの違い
9. RPAの代表的な事例
10. 注目のRPAツールと関連サービス
11. 無料で使えるRPA
12. 導入/業務での活用ノウハウ解説記事
13. RPAの新着記事

1. RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)とは

 RPAは「ロボティック・プロセス・オートメーション」の略語だ。直訳すると「ロボットによる業務(プロセス)の自動化」という意味になる。ただし、工場などで活躍しているような機械のロボットではない。コンピューター内で動作するソフトウエアのロボットを使う。

 コンピュータ内部にロボットを住まわせ、ユーザーに代わってマウスやキーボードを操作させると考えるとイメージしやすい。あらかじめロボットに操作手順を教えておくと、自動でアプリケーションソフトや業務システムを操作したり、ファイルのコピーや移動をしたり、メールを送信したりできる。

(出所:123RF)

 これまで人間が対応してきたコンピューター上の操作をロボットに代行させることで、単純・単調な作業にかかる時間を削減できる。ただ、ロボットをいちいちゼロから開発するのは非常に手間がかかる。ロボットを作成する手間やコストがかさみ、業務自動化による削減分を上回ってしまうようでは本末転倒だ。

 こうした課題を解決するのが、ロボットを簡単に作成して管理できるソフトウエアである「RPAツール」である。RPAツールで作成したソフトウエアのロボットを「RPAロボット」や「ソフトロボ」「ボット」「Bot」などと呼ぶ。

 RPAは「ロボットによる業務の自動化」という考え方を指すと同時に、RPAのコンセプトを実現するRPAツールやRPAロボットといったソフトウエアも指す。

一般社団法人日本RPA協会の定義

 RPAは、これまでの人間のみが対応可能と想定されていた作業、もしくはより高度な作業を人間に代わって実施できるルールエンジンやAI、機械学習等を含む認知技術を活用した新しい労働力を創出する

※日本RPA協会https://rpa-japan.com/より

2. RPAで自動化できる業務

 コンピューターを使った手作業の業務はほとんど自動化できる。ただし、複雑な判断を伴う作業は苦手だ。RPAロボットはあらかじめ設定した通りにしか動かない。最も向くのはデータの抽出や入力、転記、照合といった定型業務の自動化だ。

(出所:123RF)

 典型的なのは次のような業務だ。働き方改革に取り組む企業では「残業が40時間以上の社員のリストを作成して、各社員の直属の上司にメールを送る」といった取り組みをしているかもしれない。

 単純な業務だが、手作業で実施するのは結構な手間がかかる。月末になるたびに人事担当社員が

  1. 勤怠管理システムの管理画面で、残業が40時間を超えた社員を抽出する
  2. Excelを使って、対象社員の部署と役職を整理する
  3. メールソフトを起動して、Excelシートを見ながらメールを送る

といった作業をしなければならない。

 RPAロボットを使うと、これらの作業を自動化できる。きちんと抽出できているか、送信先は正しいかといった「判断」を人間が実施し、それ以外は全てRPAロボットに任せる。こうした役割分担で仕事を進めるのが基本的なRPAの使い方だ。もちろん、判断が不要な業務であれば全て自動化できる。

 営業経費データの入力、業績指標の抽出と集計、プロジェクトの進捗管理、協力企業に送るデータの仕分け、請求データと経費管理データの照合――。業種や職種を問わず、コンピューターを使った単純作業や定型業務は職場に多くある。これらを自動化するのがRPAの役割だ。

3. RPAを導入するメリット

 RPAを導入するメリットとしては(1)コスト削減、(2)労働生産性の向上、(3)業務精度の向上、(4)人手不足の解消が挙げられる。

(出所:123RF)

(1)コスト削減

 単純作業や定型業務を自動化すれば、スタッフが手を動かす時間は確実に減る。労働時間を減らすことができれば、人件費の削減につながる。

(2)労働生産性の向上

 単純作業や定型業務から解放された社員は、顧客とのコミュニケーションや新規プロジェクトへの着手といったよりクリエーティブな業務に力を割ける。結果として労働生産性の向上が期待できる。

(3)業務精度の向上

 人はどうしてもケアレスミスをしてしまう。一方、RPAロボットは、あらかじめ設定した通りの動作を間違えずに繰り返す。ミスを削減すれば業務精度が向上する。ミスを挽回するための余計な仕事もなくなる。

(4)人手不足の解消

 ルーチンワークに追われ、新しい業務ができないと悩む職場は多い。RPAの導入で定型業務を人がやらずに済むようにすれば、人手不足の悩みまで解決できる。

4. RPAとAIは何が違う?

 業務の自動化というキーワードでは「AI(人工知能)」を思い浮かべる人も多いだろう。RPAとAIの関係はやや複雑だが、基本的には別物と考えておいたほうが理解しやすい。

 RPAロボットは「○○という名前のExcelファイルを開き、×行目☆列にある数値をコピーする。続いて、△△システムにログインして……」といった具合に、あらかじめ設定された具体的な指示通りに動く。RPAロボットが勝手に手順を変更したり、新しい手順を追加したりすることはない。

 一方、AIは人間のように判断する。例えば、手書き文字を認識するAIは、大量に学習したデータに基づいて「画像のこの箇所にこういう形があれば、『あ』であると推測できる」とAI自身が判断している。判断するための具体的な方法を人間が指示しているわけではない。

(出所:PIXTA)

 得意領域が異なるため、自動化する業務によって両者を使い分けたり組み合わせたりしている。

 使い分けでは、同じ手順を正確に繰り返す定型業務の自動化ではRPAを使う。一方、動きや音に基づく機械の故障予測のような複雑な業務はAIを使う。マニュアルに従って実施していた業務はRPA、ベテランの勘に頼っていた業務はAIといったイメージだ。

 AIとRPAを組み合わせる事例も増えてきている。その中でも多いのが、AIによる文字認識「AI-OCR」との組み合わせだ。AIで手書きの申請書などを文字認識してテキスト化し、その後の処理をRPAで自動実行する。

 ちなみにコンセプトのレベルだと、RPAはAIを含む概念だ。RPAには

  • クラス1:定型業務の自動化
  • クラス2:非定型業務の自動化
  • クラス3:高度な自律化

という3段階があるとされる。クラス2以上はAI技術も活用して実現する。

 現状、製品やサービスとして提供されているRPAツールは、大部分が「クラス1」しかできない。ただ、将来は製品・サービスが進化し、RPAの中にAIが組み込まれていく可能性もある。

5. RPAとExcelマクロは何が違う?

 「あらかじめ設定した操作を実行する」という点で、RPAはExcelのマクロ機能と似ている。違いは操作対象の幅広さだ。

 Excelマクロで自動操作できるのは、ExcelとOfficeドキュメントに限られる。一方、RPAは様々なアプリケーションやWebシステム、Windows上のファイル操作などPCでできる全ての操作が自動化の対象になる。「Webシステムを操作して取得したデータをExcelに自動入力する」といったアプリケーションを横断した自動化も容易にできる。

(出所:123RF)

 ただし、RPAさえあればExcelマクロが不要になるというわけではない。(1)RPAロボットによるExcelの自動処理は一般にExcelマクロよりも遅い、(2)RPAツールでExcel上の複雑な処理を記述するのは難易度が高い、(3)自動化担当者はExcelマクロのスキルを習得済みの場合が多い――といった背景があるからだ。

 そのため、RPAとExcelマクロを連携させて業務を自動化するケースが多い。典型例が、集計業務でWebシステムからデータをコピーし、ExcelシートにデータをペーストするまでをRPAロボットが実行するといったもの。その後の複雑な集計処理はExcelマクロに任せる。

6. RPAの代表的な機能

 RPAの機能を把握するには、デスクトップを自動操作する「RPAロボット」と、RPAロボットを作成・管理する「RPAツール」を分けて捉えると分かりやすい。

RPAロボットの機能

 あらかじめ設定された操作手順に沿ってデスクトップ操作を自動実行する。

 マウスのクリック、キーボード操作の再現、アプリケーションソフトやWebシステムの操作、コピー&ペースト、ファイルやフォルダーの操作、メール送受信、スクリーンショットの取得など人間がデスクトップ操作でできることはほとんどできる。

 製品・サービスによっては、Web API操作や外部プログラムの呼び出しといった、人手ではやりづらい操作をできる機能を持つ。

RPAツールの機能

 RPAロボットを作成、実行、管理するための機能を持つ。

■RPAロボットの作成

 RPAロボットが実施する操作手順を編集する。編集方法は大きく3つある。

 1つ目は操作の自動記録である。「レコーディング」などのボタンを押したあと、RPAロボットに自動実行させたい操作を人が実行する。多くのRPAツールは、この方法で記録した操作手順をフローチャート形式に自動的に変換する。次に紹介する方法で編集したり操作を追加したりできる。

(出所:123RF)

 2つ目はフローチャートを使って、ノンプログラミングで操作手順を編集する方法だ。操作の自動記録の後、条件分岐や繰り返し、エラー時操作などを追加する方法にも使える。もちろん、RPAロボットの操作内容を1からフローチャートで編集してもいい。

 3つ目はプログラムで操作手順を記述する方法だ。複雑・高度な処理はフローチャートでは編集しづらい場合がある。そうしたケースでの選択肢となる。

 製品やサービスによっては、RPAロボットの「部品」を上記の手順で作成し、部品を使い回しながら組み合わせてロボットを作成する機能を持つ。

■RPAロボットの実行

 RPAロボットを実行する。ユーザーの指示に基づいて実行したり、ある時間になったら自動で実行したり、メールの受信やファイル操作、アプリケーションの開始や終了とともに実行したりできる。

 製品やサービスによっては、複数のRPAロボットの実行管理ができる。あるデスクトップ環境の上でRPAロボットを動作させ、完了次第、別のデスクトップ環境で異なるRPAロボットを動作させるといった具合に、実行タイミングやスケジュールを管理する。

■RPAロボットの管理

 RPAの活用が社内に広がると「野良ロボット」のリスクが高まる。野良ロボットとは、管理者が不明で作業がブラックボックス化しているRPAロボットのことだ。同じような操作をするRPAロボットが複数動く無駄が生じたり、管理不能でガバナンスやセキュリティの脅威になったりする。

 こうした事態を防ぐため、RPAツールはRPAロボットの管理機能を提供している。RPAロボットの役割や管理者を台帳化したり、状態を監視したり、実行ログを蓄積して検索できるようにしたりする。

7. RPAツールの代表例6種類を紹介

 RPAツールの例として、日経クロステック Activeの製品データベース「製品&サービス:IT」から6製品を紹介する。

8. RPAの価格相場、製品・サービスの違い

 RPAツールの価格は幅広い。月額数万円や買い切り型で数十万円の製品もあれば、年額1000万円台の製品もある。大まかな傾向としては「デスクトップ型」は安価で、「サーバー型」は高価になる。

(出所:123RF)

 デスクトップ型とは、RPAツールをデスクトップPCにインストールして使うタイプだ。RPAロボットはそのデスクトップPC上で稼働する。PC単体の操作自動化にフォーカスしており、管理機能は簡素なものとなっている。「RDA(ロボティック・デスクトップ・オートメーション)」とも呼ばれる。

 サーバー型は、RPAツールをサーバーにインストールして使うタイプだ。このサーバーがRPAロボットを集中管理する。RPAロボットの稼働環境はデスクトップPCのほか、サーバー上で動かせる製品もある。多数のユーザー、多様なRPAロボットを想定しており、充実した管理機能を持っている場合が多い。

 クラウド上でRPAツールやRPAロボットを動かすタイプもある。その中でも低料金なサービスはWebブラウザー操作やメール送信の自動化に機能を限定しており、Windowsデスクトップの操作を自動化するほかのタイプとはやや異なる位置付けになる。

 また、一般に高額な製品ほどRPAロボットの作成機能が充実している。例えば、RPAロボット作成のために「操作の自動記録」をした際、ボタンやフォームを識別する手段を多数用意する。よくある操作を部品化して、フローチャートによる操作手順の編集を容易にしている製品もある。

9. RPAの代表的な事例

日本通運

 総合物流最大手の日本通運が、社内事務を対象にしたDX(デジタルトランスフォーメーション)を進めている。2018年春から、ソフトウエアのロボット(ソフトロボ)でパソコン作業を自動化するRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)の社内普及を推進。2021年2月までに、年62万7200時間分のパソコン作業を自動化した。

日経クロステック Active記事「日本通運がRPAでデジタル変革、年60万時間分の作業を自動化したコツ」から引用


10. 注目のRPAツールと関連サービス

 RPAを実際に導入して現場で活用するには、様々な手助けを活用したほうがスムーズに進む。RPAへの注目度は今も高まり続けており、ツールや関連サービスは豊富にある。

 以下では、注目のツールと関連サービスを紹介する。ITリテラシーに自信がない現場でもRPAロボットを作成できるツール、業種に特化したサービス、AIと組み合わせた高度な自動化を実現するツールなど多種多様だ。

オートメーション・エニウェア・ジャパン

 企業向けのRPAツール「Automation Anywhere Enterprise A2019」を提供している。AIで自動化を自動化する「Discovery Bot」や、AIで非構造化データを見つけ出す「IQ Bot」といった製品も用意している。

UiPath

 ロボットで自動化するワークフローを作成する「UiPath Studio」、ワークフローを実行する「UiPath Robots」、ロボットを管理する「UiPath Orchestrator」を中核に、様々なRPA関連ツールを提供している。

AI inside

 RPAツールと連携できるAI-OCR(AIを活用した光学文字認識)を提供している。手書き文字やFAX文字、ゆがんだり傾いたりした画像に含まれる文字なども認識できる。

リンプレス

 RPA導入前の業務プロセスの可視化や改善について、研修サービスやコンサルティングサービスを提供している。

アイエルアイ総合研究所

 RPAと連携・連動するノーコードのExcel操作自動化ツール「StiLL」を提供している。

11. 無料で使えるRPA

 まずは無料で試してみたいという人も多いだろう。RPAツールの多くは無料の評価版を提供している。RPAの使い勝手を確かめたり、情報収集の足がかりにしたりするのに有用だ。評価版は利用期間や利用できる機能に制限がある場合が多いので、その点は事前に確認しておく必要がある。

 一部のRPAツールは条件付きの無償版を提供している。例えば、米Automation Anywhereは個人開発者や学生向けの「Community Edition」を提供している。利用できるのは同社が定めた「スモールビジネス」の規模に該当する場合のみとなる。米UiPathもこれと似た条件で、無料の「UiPath Automation Cloud for community」を提供している。

12. 導入/業務での活用ノウハウ解説記事

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