ネスレ日本は2016年に電子契約の運用を始め、2020年7月時点で契約書全体の9割弱を電子契約に移行している。電子契約により「契約締結のスピードが圧倒的に速くなった」(ネスレ日本の美馬耕平法務部部長)。従来は平均20日程度かかっていたが、2~3日で済むようになったという。

 美馬耕平法務部部長は「当社は新しいことをやるのが奨励される社風。新しい取り組みが増えるに従って、守りの要に当たる法務部の業務量が増えていた。単なる増員ではなく、デジタルの力で乗り越えたいと考えた」と経緯を語る。

 ネスレ日本が扱う契約書は月間100件程度だ。多いのは機密保持契約書や業務委託契約書など。製造業としての日常的な仕入れや販売については売買契約書ではなく、より簡便な発注書のやり取りで処理しているが、初回取引時などに基本契約書を交わす。日常的ではない特殊な物品を購入する際には、そのつど売買契約書を交わす。

 これらの契約書全体のうち9割弱は弁護士ドットコムが提供するクラウド型電子契約ツール「クラウドサイン」を使った電子契約としている。ネスレ日本と契約相手がWebサイト上で契約書の電子ファイルを共有し、電子署名をするなどして契約成立とする。ハンコは使わない。

ネスレ日本が「クラウドサイン」上で作成した契約書のサンプル
(出所:ネスレ日本)
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 ただし、残る1割強の契約書は従来通り紙とハンコで処理している。官公庁や金融機関などで「どうしてもハンコが必要」と言われる契約先があるという。この場合も、契約締結前の社内の承認プロセスはクラウドサイン上で進める。最後の印刷や押印、契約相手への郵送のところだけがオフラインになる。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響で、ビジネス活動がやや低調のため、2020年春ごろから契約書を交わす件数は減少傾向だ。一方で、従来通りの紙の契約書を求めていた取引先が「電子契約に移行したい」と問い合わせてくるケースが増えているという。

従来は社内稟議手続きも紙で

 美馬部長は2015年末に就任した。この時点でネスレ日本の社内業務は典型的な日本の製造業と同様に、ハンコと紙を中心に回っていた。契約書についても、まず社内で担当者や責任者、法務部などがハンコを押しながら稟議(りんぎ)を回し、その後に契約相手の取引先に郵送していた。

ネスレ日本の美馬耕平法務部部長
(出所:ネスレ日本)

 このため、法務部で紙の扱いや郵送などの業務量が負担になっていた。社内の稟議に時間がかかるのも問題だった。幹部社員が出張中に自席のトレーに稟議中の契約書がたまり、次に出社するまで稟議が進まないこともあった。

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