AI(人工知能)や機械学習と聞いても、自分とはあまり関係ないと思われる人も多いかもしれません。しかし、実はそんなに遠い技術というわけではありません。新しいものが大好きな宇佐木さんと虎岡さんは、自社のシステムに組み込むことを検討しているようです。
SE虎岡 あれ?ウサさん、Python勉強するの?
宇佐木 うん。機械学習やろうかと思って。
SE虎岡 ウサさんは、プロマネなんだからPythonよりマネジメントを勉強して。
宇佐木 そうだけど、僕だって機械学習やりたいよ!
SE虎岡 プロジェクトが炎上しなくなってからやれよ!
宇佐木 だって、うちのシステムに機械学習を組み込むなら、お客さんに説明できるようにならないといけないし……。
SE虎岡 お客さんは、内部の仕組みに興味がないと思うけど。そういえば、その話で相談があったんだけど、とりあえず、オサカナ水族館のアップした魚の画像に自動的にタグを付ける仕組みを機械学習で実装するのでいいかな。
宇佐木 うん。あと、アップされた画像がそのまま分類できてしまうといいね。
SE虎岡 それよさそうだな。簡単に組み込めるからそうしよう。
宇佐木 あと、ウツクシ美術館のサイトに、レコメンド機能付けるのはどうかな。そうしたら、次々クリックしてくれるんじゃないかな。
SE虎岡 それも良さそうだな。今度、ウツクシさんに提案しようよ。
宇佐木 しかし、機械学習って便利だねぇ。ウチみたいな小さい会社でも、簡単に取り入れられるとは、いい時代になったもんだよ。
人工知能と機械学習、そしてディープラーニングは、一緒に語られることが多いので、定義について混乱している人が多い印象を受けます。
まず、それぞれ言葉の定義を説明し、そのあと中小企業がどのように関わりを持って行くべきかを話したいと思います。
3つの言葉の違いとは?
まず、AIと人工知能は同じものです。
「AI」はArtificial Intelligenceの略語で、「人工知能」は、その日本語にあたる言葉です。人間と同じように、「考えることができる」コンピューターを、人工知能と呼びます(将来この定義は変わる可能性があります)。
ただ、この「考えることができる」という定義がなかなか難しいです。専門家でも難しい話なので、人工知能というのは、その名の通り人工的な知能程度に考えておいてください。
さて、宇佐木さんたちが導入を検討していたのは機械学習です。
機械学習(Machine Learning)とは、人工知能を実現するための手法(アルゴリズム)の一種です。たくさんのデータから、自分で学習していくことです。「機械学習」という名前なのでそういう機械があると想像している人もいるかもしれませんが、そうではなく手法の名前です。
「機械学習」という言葉が人口に膾炙(かいしゃ)するようになったのは、深層学習の登場が大きいでしょう。一般的にはディープラーニング(Deep Learning)と呼ばれています。ディープラーニングは機械学習の手法の一つで、ニューラルネットワークの一種です。ニューラルネットワークは人間の脳の仕組みを模したもので、これを多層化したものがディープラーニングです。と、非常に理解が難しい言葉です。
あまり難しいことを言っても、皆さんの仕事と関係がなくなってしまうので、とりあえず「機械学習とはたくさんのデータを使って自分で学習していくもの」、「ディープラーニングは機械学習の一種でデータを多角的に扱う」と捉えておいてください。