プリンストン大学で1999年の秋から行われている一般人向け講義「Computers in Our World」。『プログラミング言語C』の著者としても知られる伝説の計算機科学者ブライアン・カーニハン氏が、今こそ知っておくべき「デジタル世界」の基礎知識をやさしく解説する人気の授業だ。今回は、ソフトウエアの知的財産について取り上げる。
知的財産(intellectual property)という用語は、個々人の発明や著作のような創作活動から生み出された様々な種類の無形財産を指しています。
ソフトウエアはその中でも重要な例です。ソフトウエアは無形でありながら、価値があります。大量のコードを作成して管理するためには、たゆまぬ多大な労力を必要とします。
一方、ソフトウエアを無限にコピーして世界中に配布するためのコストは、無視できるほど小さなものです。修正も容易で、最終的に、目には見えないものなのです。
ソフトウエアの所有権は法的に難しい問題を引き起こします。その難しさはハードウエアに対してよりも上回っていると思いますが、それはプログラマーである私のひいき目かもしれません。
ソフトウエアはハードウエアよりも新しい分野です。1950年頃までソフトウエアは存在していませんでしたし、ソフトウエアが独立した経済勢力になったのは、まだほんの30年ほどのことなのです。その結果、法律、商慣習、そして社会規範が進化するための時間が、まだ足りていないのです。
ここでは、いくつかの問題について説明します。ここで期待しているのは、少なくとも複数の観点から状況を理解できるような十分な技術的背景を、読者に対して説明することです。
私はまた、これを米国法の観点から書いています。他の国も同様のシステムを持っていますが、多くの点で異なっています。
知的財産を保護するためのいくつかの法的メカニズムが、その成功の程度は様々なものの、ソフトウエアに適用されています。それらには、企業秘密、著作権、特許、そしてライセンスなどが含まれているのです。