エイベックス子会社のエイベックス・テクノロジーズ(ATS)は2021年4月、NFT(Non-Fungible Token、非代替性トークン)事業に本格参入すると発表した。音楽などの著作権者ら知的財産(IP、Intellectual Property)の管理者(IPホルダー)が新たな収入を得たり、ファンが二次創作をしたりできる新たな市場を作るのが狙いだ。

 NFTはブロックチェーン技術を利用して、デジタルコンテンツの作成日時や識別番号といった鑑定書や証明書に相当するデータを保管する。ブロックチェーン参加者の相互検証によってコピーや改ざんが困難で、データを他のデータと識別可能なものとして扱える。

 NFTによって固有のIDや所有者の情報などをデジタルコンテンツに付与して唯一無二のものとして管理できる。海外ではNFTが発行された画像データの作品がオークションにかけられて高値で売買されたといった話題が目立つ。

 しかし、ATSがNFTで実現を目指す市場は、こうした海外事例とは全く異なる。同社BlockChain/UGC事業グループの山本周人ゼネラルマネージャー兼事業戦略室室長は「デジタル技術で著作権を再定義して、IPホルダーが新たなマネタイズができるビジネスモデルを作る」と話す。具体的にどのようなビジネスモデルなのかを見ていこう。

デジタルコンテンツをダンスや衣装などに分割して管理

 NFTではデジタルコンテンツに様々な付加機能を持たせられる。例えば、コンテンツが取引されるたびに、その作者といった著作権者に購入代金の一部を支払うプログラムをコンテンツに付与できる。コンテンツが流通経路をたどって転々と売買されるたびに著作権者へ対価を払える。

 ATSはこの仕組みを使って、新しいビジネスモデルを作る。ミュージックビデオを例に見てみよう。ミュージックビデオというコンテンツは、アーティストが踊るダンス(振り付け)や衣装、背景などで構成している。ATSはダンスや衣装、背景などをアセットと呼んでいる。つまりデジタルコンテンツはアセットの複合体で構成していると定義できる。

アーティストの「モーションデータ」などにも著作権を細分化
(出所:エイベックス・テクノロジーズ)
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 しかし、現在ミュージックビデオで著作権が定められているのはDVDの映像や楽曲、歌詞などに限られる。そこでATSは著作権者がコンテンツをアセットに分解したうえで、契約に基づいて流通させて、ファンが二次創作に使うと著作権者が対価を得られる仕組みを構築した。

 例えばアーティストが踊っているダンス(振り付け)は3次元(3D)ファイル形式のモーションデータに変換できる。背景はコンピュータグラフィックス(CG)、アーティストが身に付けている衣装もデータとして、それぞれ販売できる。著作権者は休眠資産だったコンテンツをアセットに分解して、契約によって様々な形で再利用できる。

 著作権者が契約で許諾していれば、ファンはモーションデータを購入して別のキャラクターにモーションデータを取り込ませてダンスを踊らせるといったデジタルならでの楽しみ方が可能だ。衣装のCGデータを購入して、ほかのキャラクターに着せることもできる。

 音楽でも同様のことが可能だ。例えば著作権者がドラムやギター、ベースのデータをアセットに分解して、ファンであるユーザーに限定販売して二次創作を許諾したとしよう。ユーザーは自分の演奏データと組み合わせて二次創作した楽曲データを販売できる。

 二次創作で収益を得たユーザーは契約に基づいてドラムやギター、ベースの演奏者に対価を支払える。「NFTが新たな作品を生む基盤となるだけでなく、クリエーターに収益をもたらす新しい市場が生まれる」(山本ゼネラルマネージャー)。

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