経済産業省と東京証券取引所が2021年6月に発表した「デジタルトランスフォーメーション(DX)銘柄 2021」。「日本の先進DX」といえる選定企業の事例を厳選して取り上げ、DX推進の勘所を探る。日本航空(JAL)は現場部門や外部企業を巻き込んだオープンイノベーションの仕組みを構築し、新型コロナ禍で空港でのサービスの非接触・非対面化を実現した。

 「チェックインですね、ご案内いたします」。空港で戸惑う乗客に声をかけ、専用端末まで誘導したのは、JALの空港スタッフが遠隔操作するアバターロボット「JET(ジェット)」だ。乗客の質問に答えながら、チェックイン端末や手荷物預け機の操作方法を案内した。端末のタッチパネルは赤外線センサーを使ってパネルに直接触らなくても操作できるようになっている。

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遠隔操作のアバターロボットが乗客を案内する
(出所:日本航空)

 空港内にあるJALのラウンジを訪れた乗客は自分のスマートフォンで座席のQRコードを読み取ってすしを注文。ほどなくスタッフが席まで届けた。以前はビュッフェ形式だったが、新たな注文システムによって新型コロナウイルス感染症の拡大リスクを抑えつつ、配膳によるサービス向上を実現した。

 これら非接触による接客サービスはJALのDX拠点「JAL Innovation Lab」を起点にして開発したものだ。JALはInnovation Labを2018年4月、東京都品川区の本社近くに開設。社内外の知見を生かして新しい付加価値やビジネスを創出する「オープンイノベーション」の活動拠点と位置づけ運営している。

 Innovation Labは広さ約500平方メートル。機器の試作に使う3Dプリンターのほか、スチームオーブンなどの調理機器は機内と同様のものを備える。さらにInnovation Lab全体が空港へのチェックインからラウンジ、搭乗ゲート、機内などを再現した空間になっている。現実に近い環境で予備実験ができるため、実際の空港や機内を使ったPoC(概念実証)にスムーズに移れる。

 だがJALの成功要因は拠点としてのInnovation Labの存在だけではない。Innovation Labの運用方法と社内外の人材・知見の「巻き込み力」にこそ、新型コロナ禍で矢継ぎ早に非接触・非対面を実現するアイデアを現場に落とし込めた真の理由がある。

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