経済産業省と東京証券取引所が2021年6月に発表した「デジタルトランスフォーメーション(DX)銘柄 2021」。「日本の先進DX」といえる選定企業の事例を厳選して取り上げ、DX推進の勘所を探る。出光興産が進めているDXのうち「人工知能(AI)による配船計画の最適化」を取り上げる。

 「単なるテクノロジーの活用ではなく、ビジネスプロセス全体を変革していく活動だ」。出光興産の三枝幸夫執行役員CDO・CIO兼デジタル・DTK推進部長は同社のDXについてこう語る。

 同社は従業員との共創「Digital for Idemitsu」、顧客との共創「Digital for Customer」、ビジネスパートナーとの共創「Digital for Ecosystem」という「共創」の3本柱で、複数のDXの取り組みを並行して進めている。このうち従業員との共創によるDXの1つが「AIによる配船計画の最適化」だ。

「ベテランの経験と勘」をAIで実現

 従来、白油船(ガソリン・軽油・灯油運搬船)の配船計画業務は10人程度のベテラン社員による手作業だった。社員は原油価格、各油槽所にあるタンクの在庫、販売見込み、輸送時の気象予報などの情報を組み合わせて立案し、Excelのシートで管理していた。

 この業務におけるベテラン社員の経験と勘をデータ化してAIを開発した。AIはインプット情報を基に最適な配船ルートを立案する。AIが提示した計画は人手で微調整するものの、輸送効率を20%向上したという。その上、計画立案の所要時間を60分の1に短縮した。

 「AIの導入により比較的若い人材でも精度の高い配船計画を立てられるようになった」と三枝執行役員は手応えを語る。2021年度内に実用化する計画だ。

配船計画の画面
配船計画の画面
(出所:出光興産)
[画像のクリックで拡大表示]

 「AIによる配船計画の最適化」を開始したのは、2019年6月のことだ。AI開発プラットフォーム「ReNom」を提供するグリッド(東京・港)と2020年6月にかけて実証実験を行った。

 実証実験では、製油所から油槽所へ製品を海上輸送する現実の配船オペレーションを再現するシミュレーターと配船最適化モデルを開発した。同社が運用する白油船55隻の2018年~2020年4月までの約2年半分の実績データを使用した。グリッドのチームが出光興産に常駐し、「ベテラン社員へのヒアリング」「モデル開発」「シミュレーション」「社員によるレビューと修正」を繰り返した。

この先は日経クロステック Active会員の登録が必要です

日経クロステック Activeは、IT/製造/建設各分野にかかわる企業向け製品・サービスについて、選択や導入を支援する情報サイトです。製品・サービス情報、導入事例などのコンテンツを多数掲載しています。初めてご覧になる際には、会員登録(無料)をお願いいたします。