「歯磨きだけでもまだまだイノベーティブなことができる」――。ライオンの黒川博史DX推進部長は、2021年6月9日に日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボが開催した「ITイノベーターズ会議」の基調講演でこう力強く語った。

ライオンの黒川博史DX推進部長
ライオンの黒川博史DX推進部長
(撮影:井上 裕康、以下写真同)
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 ライオンは売り上げ拡大や顧客体験(CX)を向上するため、自社で保有する口腔(こうくう)健康データとAI(人工知能)やデータ分析などの技術を組み合わせて、新たなオーラルケア事業の創出などに挑んでいる。そのために同社は2021年1月、デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する組織「DX推進部」を立ち上げた。ヘルスケアのデータ分析を手掛けていた研究開発部隊を発展させた組織で、社内から優秀なデータサイエンティストなどを集結させ、全社横断的にDXを統括・推進する。

社内と技術をつなぐ「翻訳家」

 ライオンのDX推進部の役割は、新たな顧客体験の創出(攻めのDX)と新たな業務体験の創出(守りのDX)である。そのDX推進部について黒川氏は、「2つの翻訳機能を持つ」と説明する。

 1つが、デジタルの知見を生かして社内の課題解決をリードする「デジタルナビゲーター」としての翻訳機能。もう1つが社内の課題を解決するためにAIなどを活用したシステムに適切に実装して分析できるようにする「データサイエンティスト」としての翻訳機能だ。「(DX推進部を)社内と技術をつなぐ翻訳家と位置づけている」(黒川氏)。

ライオンのDX推進部が持つ2つの翻訳機能
ライオンのDX推進部が持つ2つの翻訳機能
(黒川氏の講演資料を基に日経クロステック作成)
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 DXの成果は既に現れており、歯ブラシの新商品開発のプロセスでAIを使い効率化することでサンプルの作製数を半分に減らした。このほか、歯磨き粉の香料開発作業のプロセスを大幅に効率化したという。今後は社内に蓄積した口腔健康データを基に、基礎健康データや生活習慣データなどを組み合わせて個々の生活者にパーソナライズした最適なサービス・ソリューションを提供するビジネスの構築を目指す。

 「我々だけで(顧客体験を高めるDX)サービスを開発するのは難しい。他社と広く協業したり、副業人材を積極的に受け入れたりして、オープンイノベーションでオーラルヘルスケアの進化というものを追求していきたい」(黒川氏)と意気込みを語った。

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