「DXで最も悩ましいことは?」――。
日経BP 総合研究所 イノベーションICTラボが2021年6月9日に開催した「ITイノベーターズ会議」。エグゼクティブメンバー(幹事会員)によるディスカッションでは毎回、その場で集計したアンケートを基に議論が繰り広げられる。
今回、最も議論が熱を帯びたのが冒頭の問いだ。「売り上げ拡大やCX(顧客体験)向上のためのDX(デジタルトランスフォーメーション)で最も悩ましいことは?」を尋ねたところ、「人材育成」(36.4%)を抑え、「組織風土改革、事業部門の巻き込み」(43.3%)が最多となった。
幹事会員からは組織風土を改革するための様々な取り組みが紹介された。
「いきなりイノベーションは起こせない」
テクノロジー活用にそれほど力を入れなくても、これまで成長を続けられた企業は少なくない。ただいつかは成長に限界がくるため、新しいことにも取り組まねばならない。とはいえ大風呂敷を広げてDXを推進しても、「笛吹けど踊らず」になりかねない。
「いきなりテクノロジー活用を急速に進めても、イノベーションを起こせるわけではない。テクノロジー活用のメリットをできるだけ多くの社員に少しずつ感じてもらうため、まずは成果を上げやすく、やりやすいところから着手している」。首都圏にディスカウントスーパーを展開するオーケーの田中覚執行役員IT本部長はこう話す。
その具体策としてオーケーは、従業員がExcelで管理しているデータをダッシュボードで見られるようにするなど、IT環境の整備を進めているという。DXだからといって全社を挙げて取り組む施策ばかりではない。会社の風土やIT活用の歴史などに応じて打ち手を考え、小さくてもできることから迅速に実行に移す。これが変革リーダーの使命といえる。小さな成功体験の積み重ねが、変革風土をつくっていく。