事務作業を自動化して、作業時間を80%短縮できる――。「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」は、人工知能(AI)と並ぶ企業ITの最注目キーワードになっている。ただ、ツールの価格は安くても月額数万円、買い切り型で数十万円と気軽に試すには高額だ。中小企業だと尻込みしてしまうかもしれない。そんな企業や組織でも使いやすい無料RPAツールを紹介しよう。

初回公開:2021/3/17
最終更新:2021/3/24

 RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)ツールは、コンピューターを使った手作業の業務を自動化する。コンピュータ内部にソフトウエアのロボットを住まわせ、ユーザーに代わってマウスやキーボードを操作させるイメージだ。

 ロボットは自動でアプリケーションソフトや業務システムを操作したり、ファイルのコピーや移動をしたり、メールを送信したりできる。データの抽出や入力、転記、照合といった定型業務を自動化する切り札として注目を集めている。

 営業経費データの入力、業績指標の抽出と集計、プロジェクトの進捗管理、協力企業に送るデータの仕分け、請求データと経費管理データの照合――。業種や職種を問わず、コンピューターを使った単純作業や定型業務は職場に多くある。これらを自動化できる。

最低数十万円するRPAツールが無料に!?

 RPAツールの価格は幅が広い。月額数万円や買い切り型で数十万円の製品もあれば、年額1000万円台の製品もある。大まかな傾向としては管理機能が簡素な「デスクトップ型」は安価で、豊富な管理機能を持つ「サーバー型」は高価になる。

(出所:123RF)
(出所:123RF)

 比較的安価な製品でも数十万円するのでは、お試しで使うにはハードルが高い。中小企業では予算の確保自体が難しいと感じるかもしれない。そんな悩みを持つ人への福音となるのが「無料のRPAツール」だ。

 無料のRPAツールは大きく3つのパターンがある。(1)有名定番ツールの無料評価版、(2)有名定番ツールの中小組織版、(3)条件なしの無料RPAツールである。

(1)有名定番ツールの無料評価版

 RPAの定番ツールとしては、Automation Anywhere Enterprise A2019(オートメーション・エニウェア・ジャパン)、Autoジョブ名人(ユーザックシステム)、BizRobo!(RPAテクノロジーズ)、Blue Prism(Blue Prism)、UiPathプラットフォーム(UiPath)、WinActor(NTTアドバンステクノロジ)がよく知られている。

 どのツールも無料で使える評価版をダウンロード提供している。30日~60日間、企業規模を問わずにほぼフル機能を利用できる。RPAツールの使い勝手を確かめたり、情報収集の足がかりにしたりするのに有用だ。

 高価な製品・サービスも無料で使えるため、ツールの入れ替えを検討している企業にも向く。サポート付きのトライアルであれば、期間内であればメールや電話で質問できたりトレーニングコースを無料で受講できたりする。

(2)有名定番ツールの中小組織版

 RPAを使って業務を自動化してみたいが、予算を確保できないという個人事業主や中小企業におすすめの選択肢が「有名定番ツールの中小組織版」だ。

Automation Anywhere Community Edition

 有名定番ツールのうち、一部の製品は条件付きの無償版を提供している。米Automation Anywhereは個人開発者や学生向けの「Community Edition」を提供している。利用できるのは、個人の開発者や学生、または同社が定めた「スモールビジネス」の規模に該当する場合のみとなる。

 スモールビジネスに該当するのは以下の条件を満たす企業のみ。1つでも超過している場合には対象とならない。

  1. (物理および仮想を含む)マシン台数が250未満
  2. ユーザー数が50未満
  3. 年間収益が500万ドル未満

 有償版と同様に無制限にロボットを作成できる。有償版が持つ先進機能の一部も利用できる。クラウドサービスとして提供されているため、サーバーのセットアップは不要だ。

Automation Anywhere Community Editionのページ
Automation Anywhere Community Editionのページ
(出所:オートメーション・エニウェア・ジャパン)
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UiPath Automation Cloud for community

 米UiPathも無料で使える「UiPath Automation Cloud for community」を提供している。利用条件はAutomation Anywhere Community Editionと似ている。利用できるのは、個人または以下の条件を満たす「小規模組織」に該当する場合のみだ。

  1. 250未満の物理的または仮想的なマシンまたはユーザー
  2. 500万米ドル相当未満の年間収益

 なお、この条件を満たさない大規模組織であっても、非営利目的(教育、ハッカソン、個人または組織による研究、内部研修)に限り、UiPath Automation Cloud for communityを利用できる。

 クラウドサービスとして提供され、開発環境の「Studio」を2つ、人を介さずに実行する「Unattendedロボット」を1つ、人手を介して実行する「Attendedロボット」を2つ利用できる。

Automation Anywhere Community Editionのページ
Automation Anywhere Community Editionのページ
(出所:UiPath)
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(3)条件なしの無料RPAツール

 新たな選択肢として台頭してきたのが、「条件なしの無料RPAツール」だ。以前からオープンソースソフトウエアのRPAツールがあったが、活用事例はごくわずかだった。その状況を一変させる可能性が出てきている。

Microsoft Power Automate Desktop

 特に注目を集めているのが、米マイクロソフトの動向だ。同社は2021年3月にRPAツール「Microsoft Power Automate Desktop」を、Windows 10のユーザーに向けて追加費用なしで提供すると発表した。

 同社のサイトからダウンロードでき、日本語のインターフェースも利用できる。Windows 10 Insider Previewにもプリインストールされる。

 RPAロボットの作成機能は有料ツール顔負けだ。デスクトップ操作を“録画”するように操作手順を記録する機能や、ローコードの開発環境を提供する。開発環境では数百種類の操作を用意し、マウスでドラッグ&ドロップしながら操作を組み合わせて、RPAロボットの作業フローを作成できる。

Microsoft Power Automate Desktopの画面
Microsoft Power Automate Desktopの画面
(出所:米マイクロソフト)
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 Microsoft Power Automate DesktopのRPAロボットで、Excelなどのファイルやフォルダー、デスクトップアプリケーション、Webのアプリケーションのほか、メインフレームやオフコンを操作するエミュレーターなども操作できる。

 Microsoft Power Automate Desktopは企業規模を問わず、利用期間の制限もない。ただ、高度な管理機能やクラウド連携機能を使うには、有償サービス「Power Automate」の追加プランの利用が必要になる。

注目のRPAツールと関連サービス

 RPAを実際に導入して現場で活用するには、様々な手助けを活用したほうがスムーズに進む。RPAへの注目度は今も高まり続けており、ツールや関連サービスは豊富にある。

 以下では、注目のツールと関連サービスを紹介する。ITリテラシーに自信がない現場でもRPAロボットを作成できるツール、業種に特化したサービス、AIと組み合わせた高度な自動化を実現するツールなど多種多様だ。

UiPath

 ロボットで自動化するワークフローを作成する「UiPath Studio」、ワークフローを実行する「UiPath Robots」、ロボットを管理する「UiPath Orchestrator」を中核に、様々なRPA関連ツールを提供している。

AI inside

 RPAツールと連携できるAI-OCR(AIを活用した光学文字認識)を提供している。手書き文字やFAX文字、ゆがんだり傾いたりした画像に含まれる文字なども認識できる。

リンプレス

 RPA導入前の業務プロセスの可視化や改善について、研修サービスやコンサルティングサービスを提供している。

アイエルアイ総合研究所

 RPAと連携・連動するノーコードのExcel操作自動化ツール「StiLL」を提供している。

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