事務作業を自動化して、作業時間を80%短縮できる――。「RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)」は、デジタルトランスフォーメーション(DX)の最注目キーワードになっている。業務を自動化する技術としては「AI(人工知能)」を思い浮かべる人も多いだろう。RPAはAIとは何が違うのだろうか。

初回公開:2021/3/24
最終更新:2021/3/24

 RPAは「ロボティック・プロセス・オートメーション」の略語だ。直訳すると「ロボットによる業務(プロセス)の自動化」という意味になる。ただし、工場などで活躍しているような機械のロボットではない。コンピューター内で動作するソフトウエアのロボットを使う。

 ロボットがユーザーに代わってマウスやキーボードを操作させると考えるとイメージしやすい。人手で実施してきたコンピューター上の操作をロボットに代行させ、業務を効率化できる。

 業務の自動化というキーワードでは「AI(人工知能)」を思い浮かべる人も多いだろう。RPAとAIの関係はやや複雑だが、基本的には別物と考えたほうが理解しやすい。

(出所:PIXTA)
(出所:PIXTA)

定型作業を間違わずに自動化するRPA

 RPAは、ロボットにあらかじめ操作手順を教えておくツールだ。RPAロボットは手順に従ってアプリケーションソフトや業務システムを操作したり、ファイルのコピーや移動をしたり、メールを送信したりして業務を自動化する。

 こうした手順はプログラムのように具体的にきっちりと決まっている。「○○という名前のExcelファイルを開き、×行目☆列にある数値をコピーする。続いて、△△システムにログインし、□□ボタンを押して……」といった具合だ。RPAロボットが勝手に手順を変更したり、新しい手順を追加したりすることはない。

 実際、RPAツールでロボットを作成する際、作業手順はプログラムの設計とよく似た「フローチャート」の様式で編集する製品・サービスが多い。

RPAツール「Blue Prism」のロボット作成画面のイメージ
RPAツール「Blue Prism」のロボット作成画面のイメージ
(出所:Blue Prism)
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 こうした特徴を持ったツールであるため、決められた作業手順を間違わずに繰り返すのは得意だ。一方で複雑な判断を伴う作業は苦手だ。業務では

  • 営業経費データを入力する
  • 業績指標を抽出して集計する
  • プロジェクトの進捗を管理する
  • 協力企業に送るデータを仕分ける
  • 請求データと経費管理データを照合する

といった定型業務の自動化がRPAの活用シーンとなる。マニュアルに基づいて実施していた業務の自動化に向く、と考えると分かりやすい。

人間の「勘と経験」を自動化するAI

 一方、AIは大量に学習したデータに基づいて人間のように判断する。例えば、手書き文字を認識する技術はAIで進化し、現在では高精度に手書き文字をテキストに変換できる。

 手書き文字は人によって筆跡が異なるが、AIは「このパターンに当てはまる形であれば、『あ』の文字の特徴と近い」と推測している。人間はやや崩れた手書き文字でも、勘や経験で文字を認識できる。これと同様の推論を、コンピュータを使って自動でできるようにしたのがAIだ。

(出所:123RF)
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 AIは手書き文字認識だけでなく、音声認識や画像認識、自然言語処理、データの分類など様々な応用例がある。業務では

  • 手書き文字が何と書いているか推測する
  • 機械の振動や音から故障時期を予測する
  • カメラで撮影した人の年齢、性別を推測する
  • 採用エントリーシートの合否を判定する
  • 季節や立地、商品などに基づいて需要を予測する

といった使い方が多い。社員の勘や経験に頼っていた業務を自動化するイメージだ。複雑な判断ができる一方、一定程度の間違いが生じる。

AIとRPAの連携で自動化できる業務がどんどん増える

 AIとRPAを組み合わせる事例も増えてきている。AIによる文字認識「AI-OCR」と組み合わせたり、非構造化データから情報を抜き出す技術と組み合わせたりする。これにより、RPA単体では自動化できなかった業務まで自動化できるようになりつつある。

 例えば、AI-OCRを使うと、手書き書類の処理まで自動化できる。例えば、顧客が住宅ローンを申し込んだ際の審査業務に、AI-OCRとRPAを組み合わせる事例が登場している。従来は申込書を受け取ったあと、不備がないかベテラン担当者が目視でチェックしていた。AI-OCRとRPAを組み合わせると、申込書をスキャンしたあとの業務の大部分を自動化できる。

RPA+AI-OCRの事例:アルヒ

 OCRが読み取ったデータを確認する作業に工夫を凝らしているのが住宅ローンを手掛けるアルヒだ。ポイントは文書の種類を判別するAI(人工知能)とOCRを組み合わせた新技術「AI OCR」を採用したところにある。

 同社は2019年1月、顧客が住宅ローンを正式に申し込んだ際の「本審査業務」にAI OCRとRPAを導入した。住宅ローンの審査には、申し込みを検討中の顧客の返済能力などをその場で確かめる「事前審査業務」と、正式な申し込みに際しての本審査業務の2つがある。まず前者の事前審査業務について2017年1月にOCRとRPAを導入。それまで事前審査の結果を出すのに1時間かかっていたところを、10分に短縮できたという。

RPAと相性バッチリ、導入効果をぐっと引き上げるあの技術」から引用


 非構造化データから情報を抜き出すAI技術と組み合わせるのも有用だ。一例が取引先から受け取る請求書の処理。フォーマットが多種多様な場合、そこに書かれている数字や文字が何を示すのかOCRだけでは分からない。AIで金額や日次、支払先などを自動認識すれば、構造化された「請求データベース」への登録データに変換できる。これをRPAと組み合わせると、請求書の受け取りから支払いまでの業務を自動化できる。

 画像認識と組み合わせれば、製造業の検品を自動化できる。例えば、RPAで抜き取り検査のように画像を取得し、日付やラインの名称といった情報を付加してデータベースに登録していく。AIを使った画像認識技術でこれを検査すると、人手を使わずに抜き取りの不良品判定ができる。

 定型作業の自動化を得意とするRPAと、勘と経験の自動化を得意とするAIは互いに得意・不得意を補い合う関係だ。連携が進むとともに、業務の自動化はさらに進展していく。

注目のRPAツールと関連サービス

 RPAを実際に導入して現場で活用するには、様々な手助けを活用したほうがスムーズに進む。RPAへの注目度は今も高まり続けており、ツールや関連サービスは豊富にある。

 以下では、注目のツールと関連サービスを紹介する。ITリテラシーに自信がない現場でもRPAロボットを作成できるツール、業種に特化したサービス、AIと組み合わせた高度な自動化を実現するツールなど多種多様だ。

UiPath

 ロボットで自動化するワークフローを作成する「UiPath Studio」、ワークフローを実行する「UiPath Robots」、ロボットを管理する「UiPath Orchestrator」を中核に、様々なRPA関連ツールを提供している。

AI inside

 RPAツールと連携できるAI-OCR(AIを活用した光学文字認識)を提供している。手書き文字やFAX文字、ゆがんだり傾いたりした画像に含まれる文字なども認識できる。

リンプレス

 RPA導入前の業務プロセスの可視化や改善について、研修サービスやコンサルティングサービスを提供している。

アイエルアイ総合研究所

 RPAと連携・連動するノーコードのExcel操作自動化ツール「StiLL」を提供している。

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