この2年足らずでリモートワークが急速に広がり、人が仕事をする環境(ワークプレース)に新たな課題が顕在化した。コミュニケーションの不足やコラボレーションの難しさのほか、ITリテラシーの低い従業員が置き去りになる問題や上司が部下を思うように指導・監督できなくなる問題などが発生している。
こうした課題を解決するデジタルツールが今、存在感を増している。オフィスワークとリモートワークのハイブリッドな働き方を可能にする、注目のデジタルツールをピックアップする。

従業員のエクスペリエンスとエンゲージメントに不安
リモートワーク環境でのワークプレースから派生する課題は、大きく2つに分けられる。1つは従業員が遭遇する業務上の体験(エクスペリエンス)が変化したことで、本来のパフォーマンスが発揮できなくなるという懸念である。もう1つは、従業員同士の関係(エンゲージメント)が希薄になり、チーム力が弱まるのではないかという不安だ。
エクスペリエンスでは、例えばITリテラシーの低い従業員が、従来は隣席の同僚にデジタルツールの使い方を教わって作業を進めていたが、その体験が変わった。リモート環境では質問をしづらくなり、ツールを使いこなせないために、仕事の効率が落ちてしまうといった問題が起こる。
エンゲージメントとは、雑談や交流、ちょっとした相談などで醸成するものだ。リモート環境では個々の従業員による組織への帰属意識が弱まって、チームとしてのまとまりを欠き、イノベーションが起こりづらくなったり、意思決定が遅れて残業時間が増えたりするような事態が発生する。
実際にエンゲージメントがとれているワークプレースでは、販売成績が37%増加したり、クリエイティブ能力が3倍になったりといった好影響があるという(米国心理学会、2005年)。逆にエンゲージメントが欠けたり弱まったりしたときの負の影響も、推して知れる。