近年、SDGs(持続可能な開発目標)や環境配慮、COVID-19(新型コロナウイルス感染症)対応など、企業には経済的利益だけでなく社会課題解決も求められるようになり、その両立を図るためにデジタル技術の活用がトレンドとなっている。例えばCOVID-19対応においても、社会的距離確保と企業活動両立を図るために、テレワークを導入する企業が増えているのは周知の事実である。では、一体どれだけの企業がテレワークを導入しているのだろうか。

図1 テレワークの実施状況
図1 テレワークの実施状況
東京商工会議所の「第6回『新型コロナウイルスに関するアンケート』調査」を基に、アビームコンサルティングが作成
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 東京商工会議所の調査によると、日本の大企業の約56%がテレワークを実施中で、その約50%が従業員の5割以上にテレワークを適用している(図1)。しかし、実態は推進、定着しきれていない企業も多く、その傾向はITによる業務効率化が進んでいない企業にとっては顕著と言えよう。

 調達業務においてもCOVID-19の影響でサプライチェーンが停滞し、部材供給が困難を極めている中、一層顕在化した業務・組織の課題に対してデジタル技術を活用した取り組みが求められている。本稿では、デジタル技術の活用を軸に、日系企業の調達部門の戦略的位置づけ向上について説明する。

なぜ調達領域の課題は解決されないか

 では、COVID-19を皮切りに顕在化した調達業務の課題は何か。まず、業務観点での課題を取り上げたい。

 調達部門にヒアリングを行うと、工数が多い業務の一つにソーシング業務が挙げられる。ソーシングとはサプライヤーへの見積もりやコスト査定、価格交渉など調達にかかわる中核業務のこと。多くの専門知識を有するためにシステム化が難しく、デジタル技術の活用が遅れていることが多い。システムが対応していないために、見積依頼書や仕様書、サプライヤーからの見積書については紙やPDFによるマニュアル業務が残っている。その弊害として業務プロセスが標準化できずに、「属人」がはびこっている。これらは「マニュアル業務だから出社が必要」「有識者に相談するにはテレワークは効率が悪い」という組織風土につながり、テレワーク推進の弊害になっていると考えられる。

 次に、組織観点での課題を紹介したい。調達部門に調査を行うと、調達部門はベテランバイヤーの層が厚く、中間層が欠けている構成になっていることが多い。中長期的にみると、ベテラン社員の退職とともに、調達部門の現場力の低下が懸念される。しかし、システム化が進んでいないソーシング領域の知見は属人化傾向にあり、正しく伝達されることなくノウハウを喪失する懸念がある。また、ノウハウ自体を標準化したくても、情報量が多く、担当者が分散されていて、体系的整理が困難であることも見受けられる。現在、仕事を回しているスキルの高い人材の絶対数減少を見込み、デジタル技術の活用を通して属人的業務の解消・有用なノウハウの伝承に取り組むべき状況にある。

 いずれの課題もCOVID-19によってニューノーマル時代が訪れる前から存在していたが、ニューノーマル時代への突入によって対応の緊急度が増したといえる。

 これらの課題解決に向けたソーシング業務改革の取り組みとして、「デジタル技術の活用による、紙やPDFのマニュアルで作成されたデータの体系的な整理と電子化」と「ベテランのノウハウの標準化と組織におけるノウハウの活用」がポイントになると筆者は考える(図2)。

図2 調達・購買領域の課題に対する取り組むべきポイント
図2 調達・購買領域の課題に対する取り組むべきポイント
(出所:アビームコンサルティング)
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