デジタルシフトに伴い様々なシステムが利用されるようになったが、システム間を連携する業務は人手頼みの場合が多い。その負荷は高まる一方だ。業務プロセス全体の効率化を図るには、個別の業務を自動化するだけでは不十分である。システム間の連携業務も自動化し、業務プロセスの始まりから終わりまでエンド・ツー・エンド(End to End)の業務効率化を実現する必要がある。システム間連携を人手に頼る「自動化もどき」では、DX(デジタル変革)の成功は見込めない。
本稿では、そのためのデジタルレイバー(テクノロジーの擬人化。仮想労働者)プラットフォームとその活用例、および業務改革のポイントについて解説する。さらに、この取り組みを、業務効率化から「データドリブン経営へのシフト」に深化させるために手順も紹介する。
デジタル時代の業務の実態
近年、SaaSなどで提供される企業間プラットフォームが普及し、利用が拡大している。取引先とのやりとりにおいて、契約・請求業務や購買業務で各種サービスを利用する機会が増えているのではなかろうか。このような背景から、自社の基幹システムに加えて、フロントサイドでは様々なシステムアプリケーションが利用されるようになった。しかし、システム間の連携については依然として人が担っており、その業務負荷の増大に悩まされている企業は少なくない。デジタル発展途上の課題である。
また、システムとシステムを人手でつないだとしても、データは各システムに散在されたままであり、データの一元的な管理や利活用ができない。
例えば、ある小売企業では、顧客、商品、在庫などのデータの連携や一元化を実現できていない状態が続いていた。小売企業は、直営店、販売代理店やECモールへの出店、自社のECサイトなど、複数の販売チャネルを持つことが多い。しかし、チャネルごとの管理システムと自社の基幹システムが分断されていたのだ。これでは、データを利活用できない。特に、チャネル横断の購買履歴に基づく提案やフォローアップができず、顧客を囲い込むことができない状態に陥っていた。まさに、システム分断による価値提供の制約が生まれていた。
多くの企業で「システム間連携、データ活用は進んでいない」
2021年にわれわれが実施したDXのサーベイ調査(調査期間:2021年6月2~6日、回答数:N=1030)では、多くの企業が「システムが増設続きで最適な状態で整備されていない」「基幹システムとフロントシステムが連携できていない」ことが確認できた。また、「データ管理が進んでいない。データの運用ルール・統制が未整備」という状況でもあった。
これに対して、DXに成功している企業では、「基幹システム、フロントシステムがシームレスに連携できており、最適な状態となっている」「事業のデータ管理が進んでいる。製品・サービス品質向上、データ外販などの競争力の強化に活用できている」という回答が目立った。
このDXのサーベイ調査から、DXの成功には「システム間のシームレスな連携の上に成り立つデータマネジメントが必要」であることが見えてきた。