従来のITサービス管理手法では、プロジェクトがうまく進まないケースが増えている。ITサービスの高度化・複雑化が進んだことで、Service Level Agreement(以下、SLA)を締結するだけでは、事業部門とIT部門がタッグを組み、新しいサービスを生み出すことが難しくなったからだ。では、どう変えていけば良いのか。本稿では、これからのデジタル時代における新しいITサービス管理手法のポイントについて解説する。

なぜ、ITサービス管理の刷新が必要なのか

 まず、背景を理解するために、ITサービス管理を取り巻く昨今の状況変化について押さえよう。これまでのIT活用の目的は、業務効率化が中心だった。そこでは、IT部門が事業部門に対してITサービスを提供する「提供者と利用者」の関係となっていた。従って、「ITについて事業部門は理解する必要はなく、IT部門に任せればよい」という考えが一般的だった。また、業務の変更も頻繁に発生しないため、計画的かつ品質・コストを重視した管理手法が適用された。具体的には、システム開発ではウォーターフォール型を前提としたプロジェクト管理が採用され、ITサービス提供開始後の運用保守については安定・安全を重視した厳格なマネジメント手法の「COBIT(Control Objectives for Information and related Technology)」や「ITIL (Information Technology Infrastructure Library)」(バージョン2または3)などの導入が進んだ。

 ところが、顧客ニーズが「モノからサービス」へ変化したことで、状況が変わった。これまでは「どうやってモノを購入してもらうか?」が差異化の中心で、いかに良いモノを作るかが重要だったが、モノが成熟し、モノでの差異化が難しくなった昨今においては、モノを利用することで得られる様々な顧客体験が重要となり、「どうやってサービスを使い続けてもらうか」が差異化の焦点となっている。これを実現するための要素の核心がITであることから、事業部門とIT部門が「ITサービス提供者」としてタッグを組み、ITサービスを共に開発して継続的に提供する「同志」の関係に変化した。結果として、事業部門はITを、IT部門は事業を相互に理解することが必須になってきている。

 このような変化に沿う形で、ITサービスの管理に求められることも多様化・複雑化している。デジタル時代のITサービスは、曖昧で不明瞭な顧客ニーズに対応するために、俊敏な変化に対応可能な手法が求められる。具体的には、(製品を含む)ITサービスを企画から廃止まで管理するプロダクト管理や、最低限必要な機能から始めて継続的にサービスを改善していくアジャイルアプローチなどである(図1)。

図1 デジタル時代で多様化・複雑化するITサービス管理
図1 デジタル時代で多様化・複雑化するITサービス管理
(出所:アビームコンサルティング)
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 では、このような状況変化に対して、既存のITサービス管理の仕組みをどのように変えていけば良いのか。本稿では、デジタル時代のITサービスを管理するためのポイントとして、「顧客の期待値を管理するExperience Level Agreement(以下、XLA)の導入」「組織全体の能力向上を支援する組織横断チームの設置」「サービス品質を担保する自律的なIT運用の実現」の3つを挙げ、これらについて事例を交えて解説する。

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