新型コロナウイルス感染拡大に伴うリモートワークにより、企業における顧客との対面接触機会が減少して久しい。対面営業を主戦場としていた企業はとりわけ、顧客接触機会の減少によって、収益に大きな影響が出ている。悪化した収益性を改善し向上させるために、デジタル技術を活用した営業改革に多くの企業が取り組んでいる。

 企業の営業組織には、短期的な売り上げ目標の達成だけでなく、中長期的な戦略が求められる。顧客の変化に対して絶えずアンテナを張り、顧客ニーズの変化に応じた新規ビジネスの企画を立てたり、新規顧客を取り込むために営業方針を変更したりするなど、状況に応じた柔軟な対応が必要だ。また、営業活動の現場において顧客の意思決定や行動を促すことは当然だが、時には社内の別組織を動かして顧客ニーズに対応できるように企業変革を推進することも求められる。まさに営業組織の活躍が数年後のビジネスに影響を与えるといっても過言ではない。

前年比では見えない変化をデータで捉える

 労働人口の減少が顕著になり、また働き方改革が普及してきた日本では、今後新たに営業担当者を増やすことは困難だろう。このような状況においては、デジタル技術を最大限活用して営業活動の生産性を向上させることが有用である。

 営業力を強化するうえでは、限られた営業活動量を何に振り向けるかが最も重要だ。短期的な営業実績のみを気にしても営業力は向上しない。営業組織としてどのように人材を配置し、市場に向き合わせるかが重要であり、それこそが営業戦略である。

 営業戦略として、図らずも前年度実績をベースに顧客のセグメンテーションを行い、営業担当者の勘や経験に基づいて属人性の強い営業活動をしているケースは多いだろう。ただ、この営業戦略で、必要な市場に適切な営業担当者を配置して営業活動をすることができるだろうか。過去実績ベースで把握した市場を前提に営業担当者の目標設定や配置計画を行った結果、「市場成長に伴って引き合いが急増したにもかかわらず、営業体制が脆弱で案件の獲得漏れがある」、「成長鈍化の市場にもかかわらず、営業体制を維持し続けていることから、営業担当者が余っている」などの状況を生み出している企業を多く見てきた。

 属人性の強い営業体制では、顧客アプローチの優先順位付けを正しく実施することは難しい。実際に営業担当者が優先的にアプローチすべき企業を勘や経験で判断した結果、「アプローチすべき顧客」よりも「アプローチしやすい顧客」に多くの時間を使い、「深く理解しないと売れない戦略商材」よりも「売り方を熟知している既存の商品」を提案してしまうケースは多い。

 営業活動における生産性を向上するためには、営業組織・営業担当者の双方の視点から、データに基づいた考察をする必要がある。具体的には、「客観的な基準で顧客(市場)セグメントの重要性や戦略性を見極められているか」、「前年比をベースにするのではなく、規模や戦略的重要性に基づいてターゲットを設計できているか」、「実績データに基づいて成長性・収益性を見極め、営業戦略やリソース配分の見直しができているか」といった観点で、営業戦略をデータに基づいて判断していくということである。アプローチすべき顧客を適切に見極め、優先的に営業活動を行うことで、より高い成果を上げることが可能となる(図1)。

図1 データに基づいて重要性を見極め、営業活動に優先順位を付けることで、高い成果を上げることが可能になる。顧客セグメント図の右下の領域は重要度を下げて営業リソースを節約する一方で、左上の領域に対しては積極的に投資することで、営業力を強化することができる(出所:アビームコンサルティング)
図1 データに基づいて重要性を見極め、営業活動に優先順位を付けることで、高い成果を上げることが可能になる。顧客セグメント図の右下の領域は重要度を下げて営業リソースを節約する一方で、左上の領域に対しては積極的に投資することで、営業力を強化することができる(出所:アビームコンサルティング)
[画像のクリックで拡大表示]

営業力向上のための、営業支援ツール活用の心得

 データに基づいて営業戦略を見極めるためには営業支援ツール(Sales Force Automation、以下SFA)の活用が欠かせない。例えばSFAを活用することで、営業情報の登録促進や標準化を実現できる。しかし、SFAを導入するだけでは組織の営業力は向上しない。

 通常、期末の目標達成に向けた強化点を早期に特定するためには、管理指標を用いて客観的・定量的なマネジメントを行うが、単にSFAから出力される指標をチェックするだけでは十分ではない。目標から逆算した「現時点で必要とされる商談の量や質」を把握するなどの業務改革を同時に実施する必要がある。組織または個人が保有する商談群全体の「量」と、個々の商談の進捗や確度などの「質」をもとにデータ抽出すると効率的だ。その際の前提条件として、商談情報の信頼性(精度)についても検討しなければならない。加えて、案件のステージ定義の統一、全営業組織での統一したSFAの導入、SFA以外の情報を評価・管理対象に設定しないことなど、営業組織全体の共通ルールを定めることも必要である。数年分の営業情報が蓄積されることで、営業ステージごとの移行率やリードタイムの予測精度が向上し、競争力を高めることにつながるだろう。

 一方、SFA導入や業務標準化を実施する中でも、営業担当者の一律管理は好ましくない。営業担当者の得手不得手を無視した「標準化による意欲の低下」を防ぐためにも、一定のばらつきは許容し、パフォーマンスの高い営業担当者を支援することを検討したい。営業マネジメントは担当者の課題や悩みを解消することに注力し、サポート役に徹していくことも必要である。

この先は日経クロステック Active会員の登録が必要です

日経クロステック Activeは、IT/製造/建設各分野にかかわる企業向け製品・サービスについて、選択や導入を支援する情報サイトです。製品・サービス情報、導入事例などのコンテンツを多数掲載しています。初めてご覧になる際には、会員登録(無料)をお願いいたします。