Windows 10でのInternet Explorer(IE)のサポートが2022年6月に終了する。ユーザー企業はそれまでに「脱IE」を進める必要がある。脱IEといっても何から手をつけるべきか。日本ユニシスが実際に行った検証作業を例に、手順を確認しておこう。
脱IEに際してまず行うべきなのは、現状の確認である。日本ユニシスは2020年度に、社内に約150個あるWebアプリケーションを対象にIEのサポート終了による影響を調査した。同社情報システムサービス部戦略室適用課の木村崇課長は「新たな社内標準ブラウザーに設定したChromeで動作確認をした結果、28システムで改修の必要があることが明らかになった。改修が必要だったのはスクラッチで作ったシステムが多かった。パッケージで導入したものは、パッケージをバージョンアップすれば新しいブラウザーに対応できるケースが多い印象だ」と語る。
Webアプリの改修、必須とは限らず
次に、実際にWebアプリケーションを改修するかどうかの判断だ。日本ユニシスの木村課長は「Chromeで動作確認した結果、画面表示に関して言えば多少ケイ線が太くなったり空白が大きくなったりしたものもある。だが利用者が使えないほどではないと思っているため、『影響の大きさがこの程度までなら改修はしない』という線引きをした」と説明する。
Chromeで利用できるように改修するのではなく、EdgeのIEモードを使うという判断もあり得る。「改修が必要なシステムの中には古いパッケージをそのまま利用しているものがあった。Chromeで利用できるよう作り替えるのは難しいので、EdgeのIEモードで動作検証をした。IEモードで使えるのであれば、それを利用する想定でいる」(木村課長)
日本ユニシスが社内標準ブラウザーにChromeを選んだ背景には、意外な経緯もあった。「Chromeを社内標準ブラウザーにすると発表した2020年4月の時点では、米Microsoft(マイクロソフト)のコラボレーションソフトウエアの『SharePoint』がEdgeで動作しなかったという事情があった」(木村課長)。この問題は現在では解決されているが「Chromeの世界シェアが高い点や、Chromeが自動でバージョンアップするためセキュリティー問題にいち早く対処できる点などを評価した」(同)という。
ユーザー企業が脱IEを進める上では、IEの開発元であるマイクロソフトや、マイクロソフトのパートナーであるITベンダーに相談してみるのも一つの手だ。様々な支援策を用意しているためだ。
ベンダー名 | 脱IE関連ソリューションの有無 | 脱IEに関する顧客からの問い合わせ状況 | ユーザー企業に推奨しているWebブラウザー | 顧客に提供してきたIE用プラグインなどの取り扱い |
---|---|---|---|---|
NEC | 特になし | 官民共に問い合わせは増加傾向 | 特定ブラウザーの推奨はしていない | 業種・業界向けの各製品において顧客の業務運用上必要なプラグインがあれば個別に対応する |
NTTデータ | インターネットバンキングおよび企業システムの認証で利用できる認証局・クライアント証明書サービスを提供し、脱IEへの対応および検討を進めている | IEのサポート終了が公表された2021年6月中旬以降、法人向けインターネットバンキングサービス「AnserBizSOL」に関する問い合わせが増加傾向にある | Edge(Chromium版)とChromeを推奨している。 | 事例は多くないものの、デジタル証明書の発行においてOS標準で提供されているActiveXコントロールを利用していた。当該コンポーネントの代替に関しては、専用ソフトもしくはChromeアドオンでの提供を予定している |
TIS | 当社が提供する各種サービスはサポート対象ブラウザーを広めに作っているため、脱IEの影響はそこまで受けていない | - | - | - |
伊藤忠テクノソリューションズ | 脱IEに特化したソリューションはない | リモートワークに関する問い合わせは増えている中、脱IEに特化した問い合わせは今のところ数%程度 | - | - |
大塚商会 | IEからChromium版Edgeへの移行を支援するワークショップを開催 | 一定の問い合わせはあるが、大きく増えたという認識はない。過去にも特に盛り上がっていない | Chromium版Edge | 該当プラグイン等を利用しないよう製品をバージョンアップするなどした |
日鉄ソリューションズ | システム側で脱IEに対応するまでの時間を確保できるよう「IE利用延命ソリューション」を提供 | 2020年1月末に「Adobe Flash」のサポートが終了した時期に、IE利用延命ソリューションに関する問い合わせが多かった | 特定ブラウザーの推奨はしていない | 顧客ごとに個別対応 |
日本IBM | 脱IE向けに特別なオファリングは準備せず。顧客ごとに個別対応 | - | - | - |
日本ユニシス | 閲覧するWebサイトのURLに応じて開くブラウザーを自動で判別する「ブラウザ自動切替ツール」を提供 | IEのサポート終了が発表されてから問い合わせは増えている | - | - |
日立製作所 | 特になし | 要望に応じて個別に対応を始めている | - | - |
富士通 | 顧客にはマルチブラウザー対応として、アプリケーションの開発から運用保守までを支援する「INTARFRM」を紹介している | 2020年から増加傾向にある | 特になし | 回答なし |