新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大で、医療機関をはじめ感染者対応にあたる関係機関の業務は膨れあがった。特に保健所は、コロナ患者が発生すると感染確定日の記載から初期症状の記録と県への報告、コロナ患者受け入れ病院やホテルへの入院・収容調整、自宅療養患者の健康観察など多くの業務が発生する。このため、職員は非常に厳しい状況の中で対応に当たっていた。
千葉県は、職員自らが開発した「新型コロナ感染症対策業務支援システム」(以下、新システム)を運用している。目的は、こうした保健所業務の負担軽減をはじめ、県庁でコロナ対策業務を担う部門の業務効率化を図るためだ。開発期間約3カ月を経て2021年5月に運用を開始し、県が設置する保健所13カ所と県庁のコロナ対策担当の各部門職員約120人が利用している。
複数資料に同じ情報を重複記載、しかも紙ベースで作成
導入以前、保健所では感染者が発生するとその集計やコロナ対策関係部門への連絡のため陽性者1人について10種類以上の資料を作成し、庁内メールやFAXで伝達していた。例えば、日々の記者発表に対する発生届、保健所管内以外の医療機関への入院を調整する部門への調整依頼書、ホテル療養者の調整部門への患者振り分けリストなどだ。
システム開発を担った千葉県健康福祉部の屋宜哲也氏
これらの書類は、すべて患者の氏名や住所といった基本情報のほか症状などの情報が基になっており、資料ごとに同じデータを重複して記載しなければならなかった。そのデータ作成は、手書き書類や職員個人で作製したExcelシートから印刷した連絡票など基本的に紙ベース。こうした業務が、保健所や庁内のコロナ対策関連部門を圧迫していた。