新入社員が加わって職場が新鮮な雰囲気に包まれる春。一方でベテラン社員の中には、自身の今後について不安を抱いている人もいるのではないでしょうか。

 筆者の知り合いのイトイさん(仮名、55歳)はそんな1人です。イトイさんはここ数年、よく見聞きする早期退職制度のニュースに戦々恐々としていました。業績悪化に伴う人員削減ではなく、「スキルの入れ替えのために黒字企業でも早期退職制度を導入する」といった報道もあり、まるで「50代は職場の役に立たない」と言われているかのような気分になります。「明日は我が身かもしれない」という不安が拭えませんでした。

 そうこうしているうちに自分も55歳になりました。役職定年を迎えたものの職場も仕事内容も変わらず、変化したのは給与が減ったことのみです。

 こんなときにどのような気持ちで仕事に取り組んだらよいのでしょうか。イトイさんが筆者に教えてくれた話には、多くのヒントがありました。

「とにかく良い人になろう」と決めた

 仕事は同じなのに給与が減るのは納得しがたいかもしれません。筆者自身、勤務先の経営事情によっていや応なく給与を減らされた経験がありますから、よく分かります。しかしそれを嘆いても何も変わりません。

 定年を60歳とした場合、イトイさんの会社人生はあと5年です。「まだ5年もある」と捉える人も多いのですが、土日祝日や年末年始の休暇、有休消化などの日数を数えてみると、最終年は意外に慌ただしく過ごすことになります。

 そう考えると、落ち着いて働けるのはあと4年。役職定年後の最初の1年を無駄にすると、そのまま惰性で3年間過ごしてしまうのではないか――。イトイさんは、そんな危機感を抱きました。そうならないために、イトイさんはある目標を立てたのです。

 それは「職場ではとにかく良い人になる」というものです。与えられた仕事はこなしながら、とにかく後輩にとって良い人になろう、うっとうしく思われるくらい親切な人になろうと考えたのです。

 そう決意した背景には、ベテラン社員向けキャリア研修で教えられた「退職日をこう迎えたいというイメージを持ってください」との言葉がありました。イトイさんの頭に浮かんだのは、「仕事で何かをやり遂げて退職する」というよりも、「たくさんの同僚に温かく送り出してもらいたい」ということでした。そのために、とにかく人のため、職場のためになることをして退職までの時間を過ごそうと思ったのです。

 とはいえ最初は何をしていいか迷いました。昭和の時代でもないし、いきなり机の上を拭いたりしてもメンバーは戸惑うでしょう。試行錯誤した結果、最も継続しやすく効果があると感じたのが「同僚に元気良くあいさつする」ことでした。

 それまで職場の同僚へのあいさつなど意識的にしたことがなかったのですが、いざ心がけてみると好意的な反応があり、従来よりもコミュニケーションが活発になりました。これによってなんだか自分の居場所を自分で獲得できたような気がして、仕事に張りが出たそうです。

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