現場が欲しいシステムを自らつくれるのがノーコード/ローコード開発の強み。その威力を引き出すには自由度と統制のバランスが不可欠だ。見誤ればアプリ開発が停滞してしまいかねない。

JR東日本
現場の優秀な若手を開発チームに

 JR東日本は2021年4月に米マイクロソフトの「Power Apps」を全社導入した。きっかけは同社が保有する約1万3000両の車両のうち首都圏の通勤電車を中心とした8000台弱のメンテナンスを担う「東京総合車両センター」での成果だ。日々整備や点検作業にあたる現場社員とシステム担当がチームを組んで、開発に取り組んでいる。

 Power Appsの導入はセンター側からの発案だ。センターで点検作業アプリを開発した企画科生産技術Gの生方勇士氏が、同社IT部門に「生産性の向上やメンテナンス関連データの記録・活用に役立つはず」ともちかけた。

 2020年10月に試験導入し、まず作成したのが「受付文書ワークフローアプリ」だ。センターの総務科がセンター外からの整備依頼、研修の案内といった様々な書類を関係者に展開し、承認を得る作業を担う。テスト運用したところ、外部文書の受信から回覧、承認ワークフローが完了するまでの処理にかかる時間が1件当たり28分と、紙書類の回覧やメール転送による従来のフローより7割減らせ、年間で2358時間を削減できるとの試算結果が出た。試算を経営陣に説明し、Power Appsを本格的に活用する許可を得た。

 開発の中心を成すのが「DXユニット」だ。センター企画科生産技術Gの4人に、大がかりな検査修繕や車両の最終検査を担当する保全科、車体の検査修繕などの車体科、台車や電気機器などの検査修繕を担当する装置科からメンバーを加えた合計8人のチームだ。

JR東日本のローコード開発体制
JR東日本のローコード開発体制
(写真提供:JR東日本)
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 現場部門の4人は「Excelを使った業務改善などで成果を上げていた若手を選んだ」(生産技術Gの佐藤英明助役)。優秀なメンバーを現場から引き剥がす際には反発が付きものだ。メンバーには従来の業務を軸に働いてもらいDXユニットでの活動は週2日の兼務とすること、開発したアプリで業務効率化に貢献できることなどを基に説得を重ねて同意を得たという。

 効果を発揮したのが「故障情報連絡アプリ」。トイレや蛍光灯といった、故障しても安全な運行には支障のない機器の故障情報をやりとりする。無線や電話、メモによる従来のやりとりをシステム化した。メンテナンス担当者は乗務員からの報告を人を介さず文字情報で見られるため、「車両に行ってみたら蛍光灯の長さが報告と違ったというような情報の齟齬(そご)がなくなり、スピーディーで確実なやりとりができるようになった」(生方氏)。2021年4~5月にかけて同アプリを開発し、2021年7月に運用を始めた。

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