コンビニエンスストアやスーパーマーケット、百貨店。日常を支える買い物の場が、100年に一度の大きな転換点を迎えている。無人決済やセンシング技術によるデータ活用は単なる省力化を超え、出店条件や値付けのプロセスなど、業態の姿や経営戦略の根幹を左右する存在になりつつある。EC(電子商取引)の浸透で来店はもはや前提ではなくなり、リアル店舗の役割が改めて問われている。最新の店舗をのぞくと、未来の買い物の姿が見えてきた。
棚に並ぶ商品を買い物カゴに入れ、気になる商品があれば店員を探して説明やアドバイスをもらう。列に並んで店員にレジ打ちしてもらい、代金を支払って商品を持って帰る――。当たり前だと思っていたこれらの行動は、最新の店舗では不要だ。
コンビニエンスストア大手のファミリーマートは2025年2月末までに店員が常駐しない無人店舗を全国に1000店つくる。天井や棚のカメラやセンサーでどの客が何を手に取ったかを捕捉するため、レジで購入商品のバーコードを読み取る必要がないのが特徴だ。
総合スーパーのイオンリテールは2021年、需給に応じて商品の値付けを変えるダイナミックプライシングや接客にAI(人工知能)を本格的に活用し始めた。限られた人数や習熟度が低い店員でも、適切な値付けや接客ができる高効率の店舗運営を目指している。
百貨店のそごう・西武や米シリコンバレー発のb8ta(ベータ)が目指すのは、必ずしも店で売ることを主目的としない店づくりだ。ECの利便性とリアル店舗の訴求力やデータ活用を組み合わせた店舗を開店した。ともに商品を販売するよりも来店客と商品の出合いを生み出し、店内での客の行動データで見える化して店づくりや商品の改良に役立てることに主眼を置く。