コンビニエンスストアやスーパーマーケット、百貨店。日常を支える買い物の場が、100年に一度の大きな転換点を迎えている。無人決済やセンシング技術によるデータ活用は単なる省力化を超え、出店条件や値付けのプロセスなど、業態の姿や経営戦略の根幹を左右する存在になりつつある。EC(電子商取引)の浸透で来店はもはや前提ではなくなり、リアル店舗の役割が改めて問われている。最新の店舗をのぞくと、未来の買い物の姿が見えてきた。

 店の棚に並ぶ弁当やお茶を自分のバッグに入れて、そのまま店を出る――。今なら万引きでお縄になってしまう行動も、数年後には当たり前の光景になっているかもしれない。長らく常識だと思ってきた、店舗での買い物の仕方そのものが変わっているからだ。

 「EC(電子商取引)と同じレベルの買い方の変化だ」。ファミリーマートの狩野智宏執行役員は無人決済システムへの期待と手応えをこう表現する。同社は無人決済店舗を2025年2月末までに1000店舗に増やす計画だ。

 ファミリーマートが初めて無人決済システムを使った店舗を出したのは2021年3月31日。東京都千代田区の「ファミマ!!サピアタワー/S店」だ。売り場に店員の姿はない。ゲートを通って入店した来店客が欲しい商品を手に取って決済エリアに立つと、商品バーコードを読み取らなくてもディスプレーに自動で購入商品と合計金額が表示される。電子マネーや交通系ICカードなどで決済できる。

 ファミリーマートが採用したのは2021年2月26日に資本業務提携したTOUCH TO GOの無人決済システム「TTG-SENSE」だ。天井の48個のセンサーカメラで来店客がどこにいるかを認識し、棚に取り付けられたセンサーで客が取った商品の種類や数を検知する。独自のアルゴリズムでこれらの情報をリアルタイムにひも付け、誰が何をいくつ取ったかを判定する仕組みだ。買う予定の商品は棚から直接自分のバッグやポケットに入れてもかまわない。

センサーとカメラの組み合わせで手に取った商品を判定する
センサーとカメラの組み合わせで手に取った商品を判定する
(撮影:日経クロステック)
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 運用に当たってはまず店内のどこにどの商品があるかをシステムに登録する必要がある。ファミリーマートはシステムを商品マスターと連携させており、従業員が商品画像を見ながらドラッグアンドドロップで簡単に登録できる。棚のセンサーはカスタマイズなしで10グラム~10キログラムの商品が棚から取られたことを検知できる。タブレット菓子やボールペンのような軽い商品から2リットルの飲料まで幅広い品ぞろえが可能だ。

 ファミリーマートのTTG-SENSE導入はコンビニ業界が直面する市場飽和と人手不足の問題と密接に結びついている。コンビニは通常2人以上の従業員を配置する。人件費は運用コストとなる。生産人口が減って企業間で働き手の奪い合いが激しさを増し、人件費は今後ますます上昇する恐れがある。

 従来と同様な出店も難しくなりつつある。出店できる場所は運用コストを回収して利益を出せる場所に限られるが、人口が集中するエリア、駅ナカや駅近く、オフィス街といった一定の売り上げ規模が見込める場所はほぼ出店され尽くしているからだ。

 そこで通常の店舗を「母店」としつつ、近くにTTG-SENSEによる無人決済の「子店」をつくって必要に応じて母店の従業員が子店の商品補充などをする体制を敷ければ「従来の基準では出店を断念していた地域にも出店できる」(狩野執行役員)。TOUCH TO GOによると、30平方メートル以上の店舗面積に対応する通常のTTG-SENSEの料金は、1店舗あたり月額50万円から。ファミリーマートは人件費の削減により「運用コスト面で効果が出ている」(同)という。

 TOUCH TO GOの無人決済システムを使えばレジカウンターのスペースも削減できるため、病院や工場の中といった場所の限られたスペースにも進出できる。「8平方メートルあれば、150品ほどを販売できる」(同)。一方で通常レジカウンターで販売するフライドチキンや唐揚げなどのホットスナック、iTunes Cardのようなカード類の商品、宅配便や公共料金の支払いなどは現在取り扱っていない。

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