コンビニエンスストアやスーパーマーケット、百貨店。日常を支える買い物の場が、100年に一度の大きな転換点を迎えている。無人決済やセンシング技術によるデータ活用は単なる省力化を超え、出店条件や値付けのプロセスなど、業態の姿や経営戦略の根幹を左右する存在になりつつある。EC(電子商取引)の浸透で来店はもはや前提ではなくなり、リアル店舗の役割が改めて問われている。最新の店舗をのぞくと、未来の買い物の姿が見えてきた。

 商店から出てくる客が誰ひとり商品を持っていなくても、いずれ不思議な光景では無くなるかもしれない。EC(電子商取引)との融合で、店舗は必ずしも商品をその場で売る場所である必要は無くなっているからだ。リアル店舗は来店客と商品の出会いを生み出し、商品の開発や改良に役立つ消費者の意見や行動データを集める場としての意義を増す。

 2021年11月15日、b8ta Japanは日本3店舗目となる「b8ta Tokyo - Shibuya」を東京都渋谷区の渋谷駅前にオープンした。b8taは米シリコンバレーで生まれた「売らない店」だ。店内にはベンチャー企業が開発した家電や、自動車から食品まで名だたる大手メーカーの新商品など、幅広い商品が並ぶ。来店客に商品を売るのではなく、体験してもらうことに重きを置く。

「b8ta Tokyo - Shibuya」の店内の様子
「b8ta Tokyo - Shibuya」の店内の様子
(撮影:日経クロステック)
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 b8taが出品企業から受け取るのは月額の出品料のみ。量販店が売り上げに応じて出品企業から徴収するマージンや販売スタッフの人件費などは受け取らない。店舗やスマートフォンアプリを通して得られた来店客の行動データと店頭スタッフの意見や気付きを出品企業に提供し、商品の開発や改良に役立ててもらうのが、b8taのビジネスモデルだ。

店内での来店客の行動データを出品企業に提供
店内での来店客の行動データを出品企業に提供
(撮影:日経クロステック)
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 b8ta Tokyo - Shibuyaでは、2種類のAI(人工知能)カメラを使って行動データを収集している。まず入り口のカメラで来店客の性別や年齢層などの属性を判定し、人流計測センサーで店舗前半径15メートルの人流を捉える。さらに店内のカメラで来店客の動線やどのコーナーで立ち止まったかなどを捕捉する。b8taは店内の人流を基にヒートマップをつくって分析し、配置を入れ替えるなどして全体的な商品の体験率を上げるといった運用に生かしている。

 来店客は気になる商品のQRコードをスマホで読み取ると、b8taの公式アプリでECサイトのように詳しい情報を見られる。商品に関するアンケートに回答してポイントをためると、b8ta店内で販売するコーヒーの無料券やノベルティーをもらえる。b8taは公式アプリの商品情報の閲覧実績データやアンケートの内容を出品企業に提供する。

 b8ta Japanの北川卓司代表は「リテールを通じて、人々に新たな発見を提供したい」とb8taのスタンスを語る。出品企業とは3~6カ月の契約を結び、2カ月に一度商品の入れ替えを促す。幅広い品ぞろえで、いつ訪れても目的の商品が買える量販店とは一線を画す視点だ。今後は既存の小売り事業者の支援にも力を入れる計画だ。期間限定のポップアップストアとしてb8taを出店したり、b8taの仕組みを販売したりといった展開を検討しているという。

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