岸田政権の看板政策である経済安全保障推進法案が2022年4月7日、衆院本会議で可決された。今国会での成立が確実な情勢となった。早くから自民党内で経済安保の議論をリードしてきた1人である小林鷹之経済安保相に日本の経済安保政策を聞いた。「日本の弱みと強みを把握し、国としての経済安保政策の軸をつくる」と意気込む。インタビューは2022年4月5日に実施した。

(聞き手は浅川 直輝=日経コンピュータ編集長、外薗 祐理子=日経クロステック/日経コンピュータ)
小林鷹之経済安全保障相
小林鷹之経済安全保障相
1974年生まれ。千葉県出身。1999年東京大学法学部卒業後、大蔵省(現財務省)入省。財務省国際局国際機構課係長、理財局総務課課長補佐、在米日本大使館出向などを経て退職。公募を経て自民党千葉県第2選挙区支部長就任。2012年衆院議員に初当選。2021年から現職。内閣府特命担当大臣(科学技術政策、宇宙政策)も兼任する。(撮影:村田 和聡)
[画像のクリックで拡大表示]

いつごろからなぜ経済安全保障に関わるようになったのですか。

 2012年に衆院議員に初当選しました。私は財務省出身のため、もともと通貨安全保障などリアルな(軍事的な)安保とは少し違うところから安保を考える傾向がありました。

 日本にとって「虎の子」の技術が、買収や人材の引き抜き、非合法な手段など様々な形で海外流出し、「ものづくり立国日本」の地位がどんどん落ちていくのではないか――。そんな強い懸念を抱いて、自民党知的財産戦略調査会の会長をしていた甘利明衆院議員に「日本の技術流出の防止について議論したい」と2018年に訴えました。

 知財調査会の下に小委員会ができ、私も参加しました。機微な情報を扱うので、秘書すら同席しないクローズドな委員会で、経済安保について2年ほど議論し、提言も出しました。

 2020年6月に自民党で経済安保政策を担う新国際秩序創造戦略本部が発足し、事務局長に就きました。ですから、甘利さんなどと一緒に(自民党内で)経済安保の議論をリードしてきたという自負はあります。

「自律性」と「優位性・不可欠性」という2つのアプローチ

「経済安保」の定義とは。

 確立した定義があるわけではありませんが、私は「国益を経済面から確保すること」と説明しています。

 「国益」については、(国の外交・防衛政策の基本方針を定めた2013年策定の)国家安全保障戦略で定義しています。具体的には、中核となる国益は「国家の主権・独立を維持すること」と「国民の生命・身体・財産の安全を確保すること」です。

 それに続いて、「経済発展を通じてさらなる繁栄を実現すること」、そして「基本的人権の尊重などの普遍的価値やルールに基づく国際秩序を維持・擁護すること」も日本にとっての国益です。

 国益を経済面からどう確保するのかというと、大きく3つのアプローチがあります。1つ目は、経済構造の自律性を向上させること。これは日本の産業の脆弱性を把握し、解消することを意味します。他国に過度に依存せずに国民生活を維持できるようにします。

 2つ目は、優位性ひいては不可欠性を獲得すること。日本が競争力を持つ先端的な技術を見極めて磨きをかけ、世界で不可欠な存在になるという意味です。

 そして最後が、自律性と優位性・不可欠性を確保して国際社会における日本のプレゼンスを高め、国際秩序やルールの形成に主体的に参画していくことです。

日本の経済安保は成長戦略を含む広い概念となるのでしょうか。

 外交や防衛は依然として重要ですが、それらだけでは国民の命や暮らしを守れなくなっています。

 新型コロナウイルス禍においてはグローバル化したサプライチェーン(供給網)の脆弱性が露呈しました。社会や企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)が進む半面、サイバー攻撃のリスクも高まっています。

 国際情勢も変化し、自国の政治目的を実現するために経済的な手段を使う「エコノミック・ステートクラフト」が多用されている。また(量子、AI:人工知能、宇宙開発など)革新的な技術も出てきています。

 そうした時代背景のなかで複眼的に安保を捉え直す必要があります。

この先は日経クロステック Active会員の登録が必要です

日経クロステック Activeは、IT/製造/建設各分野にかかわる企業向け製品・サービスについて、選択や導入を支援する情報サイトです。製品・サービス情報、導入事例などのコンテンツを多数掲載しています。初めてご覧になる際には、会員登録(無料)をお願いいたします。