大学生の就職先としてIT業界に人気が集まる。背景にはDX需要の高まりからくる安定した業績がある。ただし、採用でオンラインを使いこなせていないIT企業は学生の支持を失いつつある。
「IT業界志望を口にする学生が明らかに増えている」――。昭和女子大学の磯野彰彦キャリア支援センター長は2023年春に卒業する大学生の就職活動(23年卒採用)についてこのように述べる。数年前までITエンジニアとして就職する学生は20~40人程度だったが、2021年4月の就職者で93人、2022年4月の就職者は104人と右肩上がりになっている。
この傾向は大学を問わず全国に広がっている。就活情報サイト「キャリタス就活」を運営するディスコが2022年3月に発表した調査結果はその一例だ。23年卒採用の大学生が志望する業界は「情報処理・ソフトウエア・ゲームソフト」と「情報・インターネットサービス」となり、IT系が1位と2位を占めた。
採用側も人気の高まりを感じている。大手の就活ナビサイトでは自社ページを訪れた学生のうち、エントリーに結びついた割合を参照できる。都内に本社を持つ中堅IT企業ではこの数値が22年卒は8%弱だったが、23年卒は15%近くに伸びている。
人気の要因について、採用コンサルタントの小西元紀氏は、「コロナ禍で加速しているDX(デジタルトランスフォーメーション)需要などで大手を中心にIT企業の業績が好調なこと」を挙げる。個々の価値観にもよるが、好調な業績に裏付けられた安定雇用や収入に魅力を感じる学生がいても不思議ではない。文系の学部も採用していることやプログラミングなどITスキルを身に付けられるといった理由も考えられるという。