金融機関のレガシーシステム脱却を阻む業界特有の課題
デジタル技術の活用によるビジネス変革、DX(デジタルトランスフォーメーション)の重要性については改めて解説する必要はないだろう。2018年に経済産業省が発表した「DXレポート」では、DXが進まない企業は競争力が落ち、2025年までに大きな経済損失が出るとして、「2025年の崖」というフレーズが登場し話題を呼んだ。
各業界で取り組みが進む中、DXが遅れがちだと言われているのが金融業界だ。先の「DXレポート」に掲載されていたレガシーシステム保持率の比較データでも、その傾向は顕著だった。2018年時点というやや古いデータとはいえ、DXへの転換が金融業界の大きな課題となっているのは間違いない。
では、何が金融業界のDXを阻んでいるのだろうか。「要因は2つあります」と言うのは、琉球銀行でシステム企画を担当する宮里和宏氏だ。

事務統括部 システム企画課
上席調査役
宮里 和宏氏
「1つは、金融業界ならではの厳しいセキュリティ要件です。金融機関のシステムは、堅牢性が求められる勘定系システムが中心。ウオーターフォール型の開発なので時間もかかりますし、システム改修のハードルも高くなってしまいます」(宮里氏)
そしてもう1つ、宮里氏がより大きな要因として挙げたのが、人材不足とスキル不足だ。これについては地方銀行ならではの苦しい事情がにじむ。
「当行含め多くの地方銀行は、コスト削減のために2000年代から勘定系システムを共同化し、システム開発・運用を外部ベンダーにアウトソーシングしてきました。当行の場合もシステム企画を担当する部署こそ残りましたが、業務の中心はアウトソーシング管理なので、開発スキルを持った人材が次第に不足し、ベンダー依存度が高まってしまったのです」(宮里氏)
今後のDXを推進するためにも、若手を中心にシステムスキルを少しずつ積み、IT主導権の確立に努めているのが、琉球銀行の現状だという。