データの利活用で次々生まれる新ビジネス

 デジタル技術を使った事業変革や、モノ売りからコト売りによる顧客体験の向上。こういったデジタルトランスフォーメーション(DX)の推進には、多様なビジネスシーンで生み出されるデータの利活用が欠かせない。これによって新規ビジネスに取り組むケースも増えてきた。

 例えば、国内のある鉄道会社の取り組みはその好例で、コンパクトなワンボックス車両を使った「オンデマンドバス」の運行を事業化している。利用者は専用スマホアプリから予約し、利用したいときに最寄りの停留所にバスを呼び出せる。停まるのは乗降客のある停留所だけ。タクシーと路線バスの中間的な乗り物といったところだ。「駅までの移動手段がない」「近所の買い物が不便」といった交通弱者のニーズに応える。

 ここに使われているのが車両および利用者のデータだ。いつ、どの停留所で何人乗り、どこまで行くのか。このデータを分析し、AIが自動で走行ルートを決定する。利用頻度の高いルートや時間帯もデータで分析し、車両や運転手の手配に生かす。鉄道会社が鉄道を補完する移動手段を提供し、MaaSのキープレイヤーに変わろうとしているのだ。

 欧米で進む銀行の大改革でもデータが重要な役割を担っている。顧客がどのような悩みを抱え、どう解決してほしいと思っているか。銀行取引を通じて得られたデータを分析し、潜在的なニーズの発掘と提案力強化につなげるのが狙いだ。

 その中からユニークな取り組みも生まれてきた。米国のある銀行は移動可能な鉄製コンテナによるポップアップ店舗を開設した。商業施設の駐車場や、入学・卒業時期には大学のキャンパス内に“出店”する。支店で顧客を待つのではなく、人が集まる場所に支店が出向いていくわけだ。

 2つのケースに共通するのは、既存ビジネスの延長線上ではなく、まったく新しい着眼点でDXに挑んでいるという点である。そして、いずれも多種多様なデータから価値を生む仕組みを整えている。これこそが、DX成功のための重要なポイントだ。「データの統合活用」は以前から多くの企業で課題となっているが、DXを実現していくためにはそれをより高次元で実現しなければならない。そのための道筋について、次ページ以降で紹介する。